この記事は2020年3月30日に公開した記事ですが、2020年6月12日の第二次補正予算成立により拡充された経済産業省の新型コロナウイルス感染症関連の支援策の内容を追記・修正するリライトを行い、2020年7月1日の拡充制度の施行に合わせて再度公開したものです。
スタートアップの融資を支援するINQの若林(@wakaba_office)です。
まずは日本の事業者を守るためにために必死で働いてくださっている金融機関の皆様方に感謝申し上げます。
この記事は事業者の皆様に制度を正しく理解頂き、積極的に活用頂く一助になればと思い、最新の新型コロナウイルス対策の融資・保証制度(以下「コロナ融資」)をシュミレーション形式と一覧形式とでまとめたGoogleスプレッドシート「【最新版】コロナ融資ガイド」 をテキストで補足するものです。
コロナ融資の変更点・最新情報だけ知りたい方は読み飛ばして「コロナ融資の変更・拡充」からご覧ください。
【最新版】コロナ融資ガイド
【最新版】コロナ融資ガイドの主な内容は次の通りです。
自社にどの制度が使えるのか知りたい方
→ コロナ融資制度シュミレーションどんな制度があるのか一覧で見たい方
→ コロナ融資貸付・保証制度一覧実質無利子・無担保について知りたい方は
→ 無利子・無担保融資と民間金融機関における実質無利子・無担保融資自治体の緊急支援制度を知りたい方は
→ 主要自治体の緊急支援制度一覧民間金融機関のコロナ融資を知りたい方は
コロナ融資制度シュミレーション(2020-05-04更新)
「はい」「いいえ」で答えて進んでいただくと使える制度がわかるシュミレーションです。
なお、選択できる制度は1つとは限りません。複数の制度に当てはまる可能性もあります。
(例:前年同月の売上高と比較して20%以上減は、前年同月比較5%減でもあるため、セーフティネット保証4号と新型コロナウイルス感染症特別貸付の両方に当てはまる)
コロナ融資制度一覧
数あるコロナ融資制度を、要件のひとつである売上の減少の割合順に整理して一覧にまとめました。
特別利子補給制度と民間金融機関における実質無利子・無担保融資
公庫等の政府系金融機関の特別利子補給制度と、民間金融機関における実質無利子・無担保融資の内容を一覧にまとめました。
ご留意頂きたい点(免責事項)
【最新版】コロナ融資ガイドのご利用にあたり、以下の点をご了承下さい。
起業家が使える制度を理解し、次のアクションを速やかに選択することを目的としています。そのため複雑な制度を極力シンプルに、一部簡略化して記載しています。申し込みにあたっては必ず各制度のWEBサイト等にて詳細をご確認ください。
ここで紹介した制度は変更されることもあります。
融資・保証には審査があります。申込要件をクリアしても審査で融資不可という判断になる可能性があります。ご自身の責任でお申し込みください。
自分がどのコロナ融資を選択できるのか、次にどんなアクションすべきか具体的に知りたい方は「【最新版】コロナ融資ガイド」をご覧ください。
コロナ融資の全体像から知りたい方は続きを、コロナ融資の注意点について知りたい方は次章を読み飛ばしてください。
コロナ融資の全体像
コロナ融資は、大きく分けて公的金融機関による融資と信用保証協会の保証に分けられます。
公的金融機関による融資とは、日本政策金融公庫(以下、「公庫」)・商工組合中央金庫(以下、「商工中金」)等の政府系金融機関からの直接の融資のことです。
信用保証協会による保証とは、下図のように企業が借入をするにあたり、各都道府県等にある信用保証協会が保証を行います。
万が一、企業が返済できなくなった場合に信用保証協会が金融機関に返済(代位弁済)し民間金融機関の貸し倒れのリスクを軽減するため、金融機関は融資をしやすく、企業は借りやすくなるという制度です。
このような信用保証協会の保証のうち、「セーフティネット保証」とは、特定の災害等により売上高等が減少している中小企業者をより手厚く支援するための措置です。
公的金融機関からの融資のうち、一部報道でよく取り上げられている無利子・無担保融資は下図のように一部の制度を利用し、さらに一定の条件を満たす場合に金利引き下げと利子補給によって行われます。
コロナ融資の変更・拡充
スタートアップや創業1期未満の事業者向けの拡充(2020-04-13追記)
新型コロナ対策融資・保証は、基本的には前年等に比べて新型コロナの影響により売上の減少が見られる場合に、それを補填する形で支援します。
一方、新しいサービス等で短期間で急成長とエクジットを目指すスタートアップの場合、急激に売上が伸びたり、新型コロナ以前から赤字であったりと、前年同期との売上高比較がそぐわない企業が多く存在しました。
また、創業間もない事業者は、比較できる前年の売上がなく、要件に当てはまりませんでした。
しかし、2020年4月8日の更新により、前年同月との比較で新型コロナの影響を確認することが適当でないスタートアップや創業間もない事業者等も対象となるよう、以下のa~cが追加され、大幅に緩和されました。
a.過去3ヶ月の平均売上高
b.令和元年12月の売上高
c.令和元年10月~12月の売上高平均額
また、それでも売上減少の要件に合致しない場合でも、公庫のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)では現実に売上減少が生じていなくても「資金繰りに著しい支障を来すおそれのある」「今後の影響が見込まれる」場合にも対象となる可能性があります。
セーフティネット5号の対象が全業種に拡大(2020-05-04追記)
これまでセーフティネット保証5号は、指定業種のみが対象となっており、ほとんどが「情報通信業」に該当するスタートアップ(ITベンチャー)は対象となりませんでした。
しかし、令和2年5月1日より、全業種が対象となりました。
民間金融機関のワンストップ対応(2020-05-04追記)
これまではセーフティネット保証4号・5号・危機関連保証を使って融資を受ける場合、事業者自身が区市町村役所に認定書の発行申請を行い、取得する必要がありました。
しかし、区市町村役所の窓口に認定書の発行を希望する事業者が殺到し、都市部の一部の区では認定書の発行が1ヶ月近く先になってしまうという事態が起こりました。
そこで、民間金融機関(銀行・信用金庫・信用組合等)が窓口となり、ワンストップで認定書の代理申請も行えるようになりました。
(自治体によっては事業者の利便性の観点からスキームが異なる場合があるとのこと)
認定書の有効期限の延長(2020-05-04追記)
これまで認定書の有効期限は30日でした。30日経過すると認定書は無効になり、再度役所で再発行頂く必要がありました。これが窓口混雑の遠因にもなっていました。
そこで、これまで〜7月31日までに発行された認定書については有効期限が令和2年8月31日までに延長されることになりました。
コロナ融資の融資金額の目安
ここまでの新型コロナ対策融資・保証での融資金額を聞き及ぶ限りでは、
月商の2〜3倍前後
月の運転資金の2〜3倍前後
月の固定費の2〜3倍前後
が目安という印象です。
特に新規先(はじめて当該金融機関と融資取引する企業等)は上記範囲内に収まることが多いように感じます。既存先(既に当該金融機関と融資取引がある企業等)はその限りではありません。
いずれにせよ、申し込み自体は現時点で想定されるコロナの影響範囲や残キャッシュをにらみ、自社なりの根拠を持って、月商または運転資金(販管費)の半年分〜1年分でされるのがよろしいかと思います。
実質無利子の融資(2020-05-15追記)
特別利子補給制度(公庫・商工中金等)と民間金融機関における実質無利子・無担保融資(セーフティネット保証等)を利用し、かつ、一定の条件を満たした場合には、当初3年間は実質無利子になります。また、実質無利子で既存借入の借換も検討可能です。
個人事業主の場合
小規模事業者の場合
中小企業者の場合
で要件が異なっていますので、下記をご参照ください。
はい・いいえで進んで頂くと、利用可能な制度(黄色)と金利等のメリット(水色)がわかります。
個人事業主の無利子無担保融資
小規模事業者の無利子無担保融資
中小企業者の無利子無担保融資
コロナ融資と代表者保証(2020-05-04追記)
平常時、信用保証協会の保証付き融資を受ける際には、代表者個人の連帯保証(以下、「代表者保証」)がつくことが一般的でした(もし会社が返済できなくなった場合には債務が代表者個人に及ぶ)。
緊急時のセーフティネット保証4号・5号・危機関連保証においても、代表者保証がつくケースがあり、代表者保証を不要とする条件については経済産業省のパンフレット等に明確な記載がありませんでした。
しかし、少なくとも令和2年5月3日の更新では、以下の条件を満たす場合、代表者保証は不要と明記されました。
法人・個人分離
資産超過
日本政策金融公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付等についてもほぼ同様で、以下の要件を満たすことにより、代表者保証を外すことができます。
法人・個人分離
資産超過
事業の見通しに問題がない
「法人・個人分離」とは?
この「法人・個人分離」ですが、日本政策金融公庫と信用保証協会では評価が異なっています。
日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度の実務上の取り扱いでは、決算書の貸借対照表の雑勘定(貸付金、仮払金等)において、法人から役員への貸付がないまたは限りなく少ないなど、法人と個人が一体と捉えられるような不透明なお金の行き来がないこととされています。
信用保証協会付きの融資においては、既存または同時に実行する信用保証の付かないプロパー融資においても代表者保証を不要としている場合に「法人・個人分離」が果たされていると判断されています。
詳しくは「経営者保証に関するガイドライン」に係るご説明」をご参照ください。
第二次補正予算(2020年6月12日成立)後の拡充
据置期間の延長
元金の返済を待ってくれる猶予期間のことを「据置期間」と言います。
その据置期間の上限が3年から5年に延長されました。
融資限度額の引き上げ
公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付、商工中金の危機対応融資を利用する場合の融資上限が引き上げられました。
利下げ限度額の引き上げ
公庫の新型コロナウイルス感染症特別貸付、商工中金の危機対応融資を利用する場合の利子が0.9%引き下げできる借入額上限が引き上げられました。
既往債務の借換限度額の引き上げ
既存の借入を借換できる金額に上限がありますが、その上限金額が引き上げられました。
特別利子補給制度の補給対象上限引き上げ
特別利子補給により当初3年間実質無利子になる金額には上限がありますが、その上限金額が引き上げられました。
いずれも借入したい企業側にとって有利な拡充です。
コロナ融資のケーススタディ
複数の制度に申し込みが制度上は可能なので、以下のケースのように、キャッシュの残高等のご事業の状況に応じてどの制度をどのタイミングで使うか検討されるとよいと考えます。
同時に複数の制度を申し込めるケース
すぐに新型コロナウイルス特別貸付とセーフティネット保証4号の両方の申込みを同時並行で行います。選択できる制度は一つとは限りません。同時に複数の制度を申込可能です。
要件に当てはまる制度から順番に申し込むケース
現時点では新型コロナウイルス特別貸付を申し込んでおき、5月の売上確定後にセーフティネット保証4号を申し込むという方法もあります。
売上の減少が確定してからコロナ融資に申し込むケース
もし4月よりも5月の方が売上が減少することが明らかな場合、売上減少の確定を待ってから融資を申し込んだ方がよりメリットの大きい制度が適用できる可能性があります。
上記の制度は平常時と同じ普通の融資枠を使う制度です。
普通の融資枠を使いますので、将来業績が回復し成長資金の融資が必要になった局面において、既に融資枠が埋まっている状態になります。
一方、5月の売上確定後の申し込みであれば、新型コロナウイルス感染症特別貸付や危機関連保証等の別枠の融資制度が使える可能性があります。
別枠の融資制度を使うことにより業績回復後に信用保証協会の一般枠が温存できます。
現時点で使える制度を使い、後に借換を行うケース
無利子無担保融資で既存借入を借換ができる可能性もあります。
借入過多の場合にはリスケも検討する
非常時とはいえ借入はあくまでも借入です。借入をするということは後の返済負担が増えることにもなります。
経済産業省は、各金融機関等に対して、既存融資のリスケ(借入条件の変更=返済月額の減額)について、事業者の実情に応じて柔軟に対応するよう要請しています。
また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業者に対して、中小企業再生支援協議会がリスケを支援する「新型コロナ特例リスケジュール」も発表されています。
既に借入が過多の場合には、追加融資だけでなくリスケもご検討頂ければと考えます。
最後に
この記事が、支援制度が行き届くべき起業家・事業者に行き届き、最大限活用され、ともにこの苦境を乗り越える一助となればと願っています。
INQでは次のような新型コロナ対策融資に関するご相談を承っています。
新型コロナの影響で今後の資金繰りが心配
どの融資を使えばいいのか?
どのタイミングで融資を受けるべきか?
など、お悩みの方はぜひ融資に関する無料相談をご利用下さい。
お電話またはオンラインにてご助言させて頂きます。
また、使える制度や次のアクションをご案内した後、さらにサポートを必要とされる事業者様には融資申請の支援も行っています。
できる限りお力になりたいと存じます。
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画像出典元:unsplash