【2025年版】シードラウンドとは?調達額の相場や株主比率、シリーズAへの進み方を徹底解説

【2025年版】シードラウンドとは?調達額の相場や株主比率、シリーズAへの進み方を徹底解説

投資ラウンド
2025.11.19
シードラウンド(Seed Round)とは、スタートアップが創業初期に行う本格的な資金調達ラウンドのことです。ビジネスの「種(Seed)」を芽吹かせ、製品が市場に受け入れられる状態(PMF:プロダクト・マーケット・フィット)を目指すための重要なフェーズです。
 
本記事では、2025年時点での最新の市場動向を踏まえ、シードラウンドの調達相場、投資家の審査基準、そして前後のラウンド(プレシード・シリーズA)との違いをわかりやすく解説します。

 

監修者情報

前川 英麿 さん
プロトスター株式会社 代表取締役
2008年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)に入社し、ベンチャーキャピタルに従事。その後、常駐のターンアラウンド支援に特化したフロンティア・ターンアラウンド株式会社を経て、2015年スローガン株式会社に参画。投資事業責任者としてSlogan COENT LLPを設立し、執行役員カンパニープレジデント就任。2016年11月に挑戦者支援インフラを創るべくプロトスター株式会社を創業。
 
他にサイトビジット社外監査役、経済産業省 先進的IoTプロジェクト選考会議 審査委員・支援機関代表等を歴任。ホロラボ社外監査役、東京都 政策目的随意契約認定審査会 外部審査委員、青山学院大学「アントレプレナーシップ概論」非常勤教師、グローバルビジネス研究所プロジェクト研究員。早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター招聘研究員等。日本ベンチャー学会所属。著『起業の壁 ―安易な起業はおススメしません



 

 

 

シードラウンドとは?事業の「仮説検証」を行うフェーズ

シードラウンドは、一般的に「プロトタイプやMVP(実用最小限の製品)が完成し、これから本格的に顧客検証を行う段階」での資金調達を指します。

投資家目線では、スタートアップの成長段階(投資ラウンド)は以下のように区分されます。

 

  1. プレシード(Pre-Seed): アイデア構想段階。創業メンバーのみの状態。

  2. シード(Seed): MVPがあり、顧客ニーズの検証を行う段階。 ←ここ!

  3. シリーズA: PMFを達成し、成長のために組織を拡大する段階。

 

シードラウンドで調達した資金は、主に「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)の達成」のために使われます。具体的には、初期プロダクトの開発費、検証を行うためのマーケティング費、そして初期コアメンバーの採用費などが主な使途です。

 

「シードステージ」と「シードラウンド」の違い

似た言葉に「シードステージ」がありますが、これは企業目線での成長段階(ステージ)を指す言葉です。対して「シードラウンド」は、投資家が投資を実行するタイミング(ラウンド)を指します。実務上はほぼ同じ意味で使われますが、資金調達の文脈では「ラウンド」という言葉が一般的です。

 

【2025年最新】シードラウンドの資金調達相場

数年前まで、シードラウンドといえば「数千万円」が相場でしたが、スタートアップ市場の成熟に伴い、調達金額は年々大型化しています。

 

調達金額:3,000万円〜1.5億円

2025年現在、シードラウンドの調達金額の目安は3,000万円〜1.5億円程度です。 特にディープテック(研究開発型)や、生成AI領域のスタートアップでは、シード段階から数億円規模の調達を行うケースも増えています。

  • 調達額の中央値: 約8,000万円前後

  • 調達期間: 3ヶ月〜6ヶ月

 

バリュエーション(企業価値):3億円〜10億円

投資家が算定する企業価値(バリュエーション)は、ポストマネー(調達後)評価額で3億円〜10億円程度が目安となります。 この段階では財務データ(売上実績)がまだ乏しいため、「チームの経歴」「市場の大きさ(TAM)」「プロダクトの優位性」などから将来価値が算出されます。

 

放出する株式比率:10%〜20%

シードラウンドで投資家に割り当てる株式の比率は、一般的に発行済株式総数の10%〜20%程度に抑えるのがセオリーです。 ここで20%以上(例えば30〜40%)を放出してしますと、次のシリーズA以降で創業者の持分が極端に減少し、経営のコントロールが難しくなるリスクがあるためです。

 

プレシード・シリーズAとの違い【比較表】

シードラウンドの位置付けを理解するために、前後のラウンドと比較してみましょう。

項目 プレシード (Pre-Seed) シード (Seed) シリーズA (Series A)
主な目的 起業準備、MVP開発 PMF(市場適合)の検証 組織拡大、顧客獲得の加速
調達額の目安 500万〜3,000万円 3,000万〜1.5億円 3億円〜10億円
評価額(目安) 〜2億円 3億円〜10億円 10億円〜30億円以上
主な投資家 エンジェル、創業メンバー VC、エンジェル、CVC VC、CVC、事業会社
重視される点 起業家の熱意、市場選定 初期トラクション、チーム 売上成長率、ユニットエコノミクス

 

特に最近では、「プレシード」と「シード」が明確に分かれる傾向にあります。まだMVPがない段階なら「プレシード」、MVPがあり数値検証に入るなら「シード」と捉えると良いでしょう。

 

シードラウンドの主な資金調達先

シードラウンドで出資・融資を行うプレイヤーは主に以下の4つです。

 

1. ベンチャーキャピタル(VC)

シード期に特化したVC(シードVC)からの調達が最も一般的です。

 

  • 特徴: 資金だけでなく、事業戦略の壁打ちや採用支援(ハンズオン)を受けられることが多い。

  • 代表的なVC: Coral Capital, ANRI, Genesia Ventures, Incubate Fund, ほか独立系VC多数。

 

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2. エンジェル投資家

起業経験者や富裕層などの個人投資家です。

  • 特徴: VCよりも決断が早く、親身なメンタリングが期待できる。プレシード〜シードの前半で特に頼りになります。

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3. 日本政策金融公庫(融資)

株式による調達(エクイティ)ではなく、借入(デット)による調達です。

  • 特徴: 「新創業融資制度」など、創業初期でも無担保・無保証で借りられる制度があります。株式の希薄化(シェア低下)を防げるため、VC調達と組み合わせて活用するのが王道です。

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4. J-KISS(投資手法としてのトレンド)

調達「先」ではありませんが、シード期の調達「手法」としてJ-KISS(日本版SAFE)が標準的になっています。 これは、厳密な株価決定を次のラウンド(シリーズAなど)まで先送りできる「新株予約権」を用いた投資契約です。

  • メリット: 契約手続きが簡単で、登記費用も安く、スピーディに着金まで進めます。

  • 注意点: 投資家側への説明が必要な場合がありますが、2025年現在は多くのシードVCがこの方式を採用しています。

 

投資家が見ている審査ポイント

まだ売上が立っていないことも多いシードラウンドにおいて、投資家は何を見て投資判断をするのでしょうか?

 

  1. Founders Market Fit(創業者と市場の相性) 「なぜあなたがこの課題を解決するのか?」という原体験や、その領域に対する深い知見・ネットワークが重視されます。

  2. 市場の大きさ(TAM) そのビジネスが成功した時、どれくらいの規模になるか。VCは大きなリターンを求めるため、ニッチすぎる市場は敬遠される傾向にあります。

  3. トラクション(初期の顧客反応) 売上がゼロでも、「MVPを使ってみたユーザーの熱量が高い」「事前登録数が伸びている」といった初期の兆し(トラクション)を示すことが重要です。

 

まとめ:シードラウンドは「準備」と「出会い」が鍵

シードラウンドは、スタートアップが急成長するための最初の燃料補給です。しかし、実績の少ないこの段階での資金調達は、投資家との信頼関係構築がすべてと言っても過言ではありません。

 

  • 市場相場を知る: 2025年は3,000万円〜1.5億円が目安。

  • 適切な投資家を選ぶ: シード特化のVCやエンジェルにアプローチする。

  • 資料を磨き込む: 事業計画書(ピッチデック)で、市場の魅力とチームの強さを伝える。

 

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