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はじめに:お金の話から逃げないことが、最初の一歩
起業を考える人の多くが、「いいアイデアがあるけどお金がない」と悩みます。
でも実は、「お金がないから起業できない」というのは誤解です。
正しい知識と準備があれば、必要な資金は外から集めることができます。
この外からお金を集める行為を、資金調達(fundraising) といいます。
この記事では、資金調達の基本から、初心者が使いやすい7つの方法、そして事業の段階(フェーズ)に合わせた選び方まで、やさしく解説します。
専門用語を避け、今日から動ける内容にしています。
この記事でわかること
- 資金調達とは?(「借りる」と「もらう」の2種類)
- なぜ資金調達が必要なのか?
- 資金調達7つの方法(メリット・デメリット一覧表)
- 【重要】出資と融資、あなたのフェーズ別・目的別の選び方
- 初心者がやりがちな落とし穴
- 資金調達を成功させる3つの準備
- まとめ:資金調達は「信頼集め」
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資金調達とは?──「借りる」と「もらう」の2種類
資金調達とは、事業に必要なお金を、外部の人や機関から集めることです。
会社がまだ小さくても、信用がなくても、やり方を選べば調達は可能です。
お金の集め方には大きく2パターンあります。
-
借りる(デットファイナンス):
- 銀行や公的機関などから借金をして、利息をつけて返す方法です。
-
もらう(エクイティファイナンス):
- 投資家に自分の会社の株を渡し、その代わりにお金を出してもらう方法です。
たとえるなら、
- 借りる=一時的にお金を預かる
- もらう=仲間を増やす
という感覚です。
どちらが正しいということはなく、事業のフェーズや目的に応じて使い分けるのがポイントです。
(詳しくは、関連記事「ベンチャー企業の資金調達方法!デッドとエクイティどう使い分ける?」でも解説しています)
なぜ資金調達が必要なのか?
「黒字になるまでの時間」を乗り切るためです。
起業初期は、開発費や人件費、広告費などが先に出ていきます。
売上が安定する前に資金が尽きると、せっかくのチャンスを逃してしまいます。
だからこそ、資金調達は生き延びるための戦略なのです。
もうひとつの目的は、「スピード」です。
自己資金だけでじっくり成長させるのも立派ですが、競合が多い市場ではそれでは間に合わないこともあります。
資金調達は、「今このタイミングで伸ばすための燃料」と考えましょう。
資金調達の7つの方法
では、具体的にどんな手段があるのでしょうか。
代表的な7つの資金調達の方法を、まずは一覧表で比較します。
| 方法 | 種類 | 返済義務 | メリット | デメリット | 初心者難易度 |
|---|---|---|---|---|---|
| ① 自己資金 | - | なし | 自由度が高い、手軽 | 金額に限界がある | ★☆☆☆☆ |
| ② 銀行融資 | 借りる | あり | 信用がつく、経営権は維持 | 審査が厳しい、返済が必要 | ★★★☆☆ |
| ③ 政府系金融機関 | 借りる | あり | 創業期に強い、低金利 | 書類が多い、審査に時間 | ★★☆☆☆ |
| ④ 投資家出資 | もらう | なし | 返済不要、経営支援あり | 経営権が減る、相手選びが重要 | ★★★★☆ |
| ⑤ クラファン | もらう/購入 | 原則なし | テストマーケになる、共感 | 手間がかかる、失敗リスク | ★★★☆☆ |
| ⑥ 補助金・助成金 | もらう | なし | 返済不要 | 申請が複雑、後払いが多い | ★★★★★ |
| ⑦ ファクタリング | 資産売却 | なし | スピードが速い | 手数料が高い、売掛金が必要 | ★★☆☆☆ |
では、それぞれを順に説明していきます。
① 自己資金(まずは自分から)
最初の一歩は、自分の貯金です。
誰もが最初は、生活費や貯金の一部を使って小さく始めます。
自己資金は自由に使えるお金なので、審査も契約もありません。
ただし、当然ながら限界があります。
生活を圧迫しない範囲で、「どこまで自腹でやるか」を冷静に決めましょう。
② 銀行融資(信用を積み上げる王道)
次に検討すべきは銀行や信用金庫の融資です。
お金を“借りる”方法で、返済義務があります。
銀行は、事業計画やキャッシュフローを重視します。
創業間もない会社でも、実績や誠実な姿勢を見せれば融資を受けられる場合があります。
一度でもきちんと返済を重ねれば、「信頼」がつき、次の融資が通りやすくなります。
③ 政府系金融機関(創業支援の味方)
日本政策金融公庫などの政府系融資は、創業初期に強い味方です。
民間銀行よりも審査が柔軟で、自己資金が少なくても相談に乗ってくれます。
書類や面談は多めですが、金利が低く、保証人不要の制度もあります。
「事業を始める前に資金がほしい」人におすすめです。
- (具体的な制度の審査ポイントは、関連記事「新創業融資制度とは?専門家に創業融資の審査ポイントや全貌を取材」で詳しく解説しています)
④ 投資家出資(返さなくていいお金)
投資家からの出資は、スタートアップ特有の調達手段です。
会社の株を一部渡す代わりに、資金を提供してもらいます。
返済義務がなく、投資家は「会社が成長して株の価値が上がること」でリターンを得ます。
このため、単にお金を出すだけでなく、アドバイスや人脈の紹介などで事業を支援してくれるケースが多いです。
ただし、株を渡す=経営権が少し減ることも意味します。信頼できる投資家を選びましょう。
また返済はしなくてもいいですが、最終的には上場やM&Aなど投資家のもっている株式を売却する機会を提供する必要があります。
- (投資家の種類や探し方は、関連記事「エンジェル投資家とは?投資を受けるメリットと探し方、注意すべき裏の顔まで徹底解説!」で詳しく解説しています)
⑤ クラウドファンディング(共感をお金に変える)
クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数から支援を集める仕組みです。
資金調達であると同時に、「共感を集めるテスト」としても有効です。
まだ実績がない事業でも、ストーリーや想いを丁寧に伝えれば資金が集まることがあります。
ただし、リターンの準備や広報活動に手間がかかるため、余裕をもって準備しましょう。
⑥ 補助金・助成金(返さなくていいが“狙う技術”が必要)
国や自治体が出す補助金・助成金も有力な手段です。
採択されれば返済不要で、設備投資や人材育成にも使えます。
ただし、申請期間が短く、競争率が高いのが現実です。
常に情報をチェックしておくことが重要です。
中小企業庁やJ-Net21などのサイトを定期的に確認するとよいでしょう。
⑦ ファクタリング(売掛金を現金化)
BtoBビジネスで役立つのがファクタリングです。
「まだ入金されていない請求書(売掛金)」を買い取ってもらい、すぐに現金化します。
急な資金ショートを防げますが、手数料が高め(数%〜10%程度)。
あくまで一時的な資金繰りの調整として使いましょう。
出資と融資、どう選ぶ?【目的別・フェーズ別 戦略】
初心者が最も迷うのが「出資(もらう)と融資(借りる)、どちらがいいか?」という点です。結論から言うと、「目的」と「事業フェーズ」で使い分けます。
(両者の根本的な違いについては、関連記事「ベンチャー企業の資金調達方法!デッドとエクイティどう使い分ける?」もご覧ください)
1. 目的別の選び方
まずは、基本的な比較です。返済義務から適している人まで出資と融資で比較してみましょう。
| 比較軸 | 出資(エクイティ) | 融資(デット) |
|---|---|---|
| 返済義務 | なし | あり |
| 株の所有 | 投資家が一部取得 | 経営者のみ |
| 調達スピード | 交渉が必要で時間がかかる | 審査が通れば早い |
| 信頼度 | 投資家が入ることで社会的信用UP | 銀行取引で信用UP |
| 適している人 | 成長重視のスタートアップ | 安定志向・中小企業 |
💡 まとめると:
-
「事業を急成長させたい人」→ 出資
- (高いリスクを取ってでも、短期間で市場を取りに行くモデル)
-
「堅実に自分のペースで進めたい人」→ 融資
- (経営権を守り、着実に利益を積み上げるモデル)
2. 事業フェーズ(段階)別の選び方
さらに重要なのが「今、自分はどの段階か?」という視点です。必要な時期に、適切な手段を選ぶことが成功の鍵です。
フェーズ1:創業前〜直後(シード期)
- 状況: アイデアや試作品はあるが、売上はほぼゼロ。
-
推奨される方法:
- ① 自己資金: まずはここから。
- ③ 政府系金融機関: 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」は、まさにこの時期の味方です。
- ⑥ 補助金・助成金: 「創業補助金」など、タイミングが合えば狙い目です。
フェーズ2:事業が回り始めた時期(アーリー期)
- 状況: サービスが完成し、少しずつ売上が立ち始めた。
-
推奨される方法:
- ④ 投資家出資(エンジェル・VC): 事業を急拡大させるため、返済不要の大きな資金を入れます。
- ② 銀行融資: 少しでも実績があれば、民間の銀行や信金も相談に乗ってくれます。
フェーズ3:急成長・拡大期(ミドル期)
- 状況: 売上が安定し、さらにシェアを伸ばしたい。
-
推奨される方法:
- ④ 投資家出資(VC): 数千万〜数億円単位の大型調達で、一気に市場を取りに行きます。
- ② 銀行融資(追加): 投資家からの出資で自己資本が厚くなると、銀行からの融資枠(借りられる額)も大きくなります。
このように、両方を組み合わせる「ハイブリッド調達」が一般的です。どちらを選んでも、「なぜその方法を選んだのか」を説明できることが大切です。
初心者がやりがちな落とし穴
資金調達で失敗しないために、よくある落とし穴を知っておきましょう。
-
Q. いくら必要か決めていません。多めにもらえますか?
- A. 危険です。「とりあえず多めに」ではなく、使い道(人件費、広告費、開発費など)ごとに明確な見積もりを出しましょう。根拠のない金額では誰もお金を出しません。
-
Q. 契約書が難しくて…読まなくても大丈夫?
- A. 絶対にダメです。特に「出資」の場合、株の割合や経営者の権利(辞めさせられる条件など)は重要です。あとから「こんなはずじゃなかった」となりやすいポイントです。
-
Q. 補助金はいつもらえるのですか?
- A. ほとんどの補助金は「後払い」です。先に設備投資などで自腹を切り、その領収書を提出して、数ヶ月後に振り込まれます。申請期間を逃すと1年待つことも。資金繰りのスケジュールを意識しましょう。
-
Q. 投資家なら誰でもいいですか?
- A. 資金より“価値観の一致”を優先してください。「誰からお金をもらうか」で会社の文化が変わります。出資は「結婚」に例えられるほど、長期的な関係になります。
資金調達を成功させる3つの準備
では、何から準備すればよいのでしょうか。
-
数字で語れるようにする
- 売上、利益、必要資金、回収期間。
- 数字を出せる人ほど信用されます。まずは簡単な事業計画書を作ってみましょう。
-
シンプルに説明できるようにする
- 「何をして、誰が喜ぶのか」を10秒で言えること。
- スタートアップでは、よくエレベーターピッチ(エレベーターにのっているわずかな時間で投資家に自社を説明できるようにすること)ができることを推奨されます。
-
事例を研究する
- 同じ業界で成功したスタートアップを調べてみましょう。
- どのような業界やフェーズでどこからどのくらいの金額を調達したかを知っていれば、無駄足が減ります。
まとめ:資金調達は「お金集め」ではなく「信頼集め」
最後に、最も伝えたいのはここです。
資金調達とは、単にお金を得る行為ではありません。
あなたの考えやビジョンに共感し、「応援したい」と思う人を増やす行為です。
つまり、信頼をお金に変えるプロセス。
投資家も銀行も、最終的に「この人なら返してくれそう」「この人なら伸ばせそう」と思った時に、資金を出します。
この記事が、あなたの「最初の一歩」を踏み出す助けになれば幸いです!
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- 🟩 この記事は StartupList編集部が作成し、プロトスター株式会社 前川英麿が監修しています。




