この記事の監修・執筆:前川 英麿(プロトスター株式会社 代表 / 元VC)早稲田大卒業後、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)等でVC投資活動に従事。現在はプロトスター株式会社代表取締役として、起業家支援インフラ「StartupList」を運営し、115回以上続くリアルイベント「SLピッチ」を主催。
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【学生起業】メリット・デメリットは?元VCが教える「失敗しないロードマップ」と3つのリアルな罠
「起業資金を借りたいけれど、親に言うと猛反対される」
「未成年でも銀行から融資は受けられる?」
「親のハンコ(連帯保証人)なしで、学生が借金できる方法はないの?」
学生起業家にとって、大きな障壁となるのが「親のブロック」です。
ビジネスプランは完璧なのに、契約書に親のサインが必要だと言われて諦めてしまう……そんなケースも見てきました。
こんにちは。元VC(ベンチャーキャピタリスト)であり、現在は起業家支援プラットフォーム『StartupList』を運営している前川英麿です。
今回は、あえてキラキラした「出資」の話ではなく、ドロドロとしたリアルな悩みである「親バレなしの借金(融資)」について、制度の裏側と突破口を解説します。
結論から申し上げます。あなたが18歳以上であれば、親の同意なし・保証人なしで、国の機関から融資を受けることは「法的・制度的には」可能です。
ただし、それにはクリアしなければならない「物理的な壁(郵便物など)」が存在します。その全貌を包み隠さずお話しします。
1. なぜ「親バレなし」で借りられるのか?(2つの根拠)
一昔前までは「未成年の契約には親の同意が必要」というのが鉄則でした。しかし、現在は法律と制度が変わっています。
① 民法改正で「18歳」から成人に
2022年4月の民法改正により、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられました。
これにより、18歳以上の大学生であれば、法律上は親の同意書(親権者の同意)なしで、一人で有効な融資契約(金銭消費貸借契約)を結ぶことができます。
携帯電話の契約やクレジットカード作成と同じく、起業の融資契約も「自分の責任」で行えるようになったのです。
② 「保証人なし」で借りられる制度がある
「でも、連帯保証人が必要でしょ? 親しか頼める人がいない」
そう思うかもしれませんが、実は「保証人不要」の融資制度が存在します。
それが、国の金融機関である「日本政策金融公庫(以下、公庫)」の制度です。
公庫の創業融資には、「原則、無担保・無保証人」という特例措置があります。この制度を利用すれば、そもそも「契約書に親のハンコをもらう」という工程自体が発生しません。
2. 学生融資の最強の味方「日本政策金融公庫」とは?
ここで一つ、元VCとして強く忠告しておきます。
いくら親にバレたくないからといって、学生が「消費者金融(カードローン)」や「ビジネスローン」に手を出すのは絶対にNGです。金利が高すぎて(年15〜18%など)、ビジネスとして成立しません。学生起業家が使うべきは、国が運営する「日本政策金融公庫(公庫)」一択です。
若者だけの特権「低金利メリット」
公庫には「女性、若者/シニア起業家支援資金」という枠組みがあります。
35歳未満であれば誰でも適用され、民間の銀行よりも圧倒的に有利な条件で審査してもらえます。
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金利: 年2〜3%前後(※情勢により変動しますが、圧倒的に低いです)
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返済期間: 余裕を持った設定が可能
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審査: 「実績」よりも「計画」を重視してくれる
「学生だから」と門前払いされることはなく、むしろ若者の挑戦できる制度なのです。
3. これが現実。親にバレる「3つの壁」と対策
「よし、公庫に行こう!」と思った方、少し待ってください。
制度上は「親の同意不要・保証人不要」でも、物理的にバレるポイントが3つあります。ここを対策しないと、後で家族会議(修羅場)になります。
壁①:郵便物攻撃(契約書・明細)
審査に通り、いざ契約となると、契約書類や返済予定表などの重要書類が「自宅(住民票の住所)」に届くことがあります。
もしあなたが実家暮らしの場合、公庫と書かれた分厚い封筒を親が見て「これ何?」となるのが典型的なバレるパターンです。
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対策: 一人暮らしをして住民票を移す。
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融資申し込み時に、郵便物の送付先を「オフィス(本店所在地)」に指定できないか担当者に相談する(※ただし、支店の方針により「自宅への送付必須」とされる場合もあります)。
壁②:自己資金(見せ金)の出処
融資を受けるには、創業資金の10分の1程度の「自己資金(コツコツ貯めたお金)」が必要です。
審査では通帳の原本やコピーを提出しますが、そこに急に親名義で大金が振り込まれていると、審査官は疑います。
「これは親御さんからのお金ですね? 贈与なのか借入なのか、念のため親御さんに確認の連絡をしてもいいですか?」こう聞かれたらアウトです。
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対策: 自分でアルバイトをして、少しずつ貯金が増えている履歴のある通帳を見せるのが一番の信用です。
壁③:18歳未満(高校生)は不可能
残念ながら、あなたが17歳以下の場合は、法律上どうあがいても親権者の同意が必要です。ここには抜け道はありません。親を説得するか、18歳になるのを待つしかありません。
4. そもそも「借金」のリスクを背負う必要はあるか?
ここまで「借りる方法」を解説しましたが、資金調達のプロとして本音を言います。
「親にバレるのが怖い」「親を説得できない」というレベルの覚悟であれば、借金(融資)はおすすめしません。
融資はあくまで「借金」です。事業が失敗しても、あなた個人が何年もかけて返済し続けなければなりません。就職した後も、給料から毎月返済が続くことになります。
返済不要の「出資」という選択肢
もしあなたが、「失敗した時に借金を背負うのが怖い」「親に迷惑をかけたくない」と思うなら、リスクの高い融資ではなく、「出資(VC・エンジェル投資家)」を検討すべきです。
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返済義務なし: 出資は借金ではありません。事業に失敗してもお金を返す必要はありません。
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親の同意不要: 投資契約も、18歳以上なら自分一人で完結します。
「学生に出資なんて無理」と思っていませんか?
実は、実績のない学生でも、アイデアと熱意があれば出資してくれる投資家は沢山います。まずはそちらを目指すのが、起業家としての「正しいリスクヘッジ」です。
👉借金は怖いという方へ。学生でも返済不要の資金調達(出資)を受ける方法はこちら
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5. まとめ:自分のリスク許容度に合わせて選ぼう
親バレせずに融資を受けることは、制度上は可能です。しかし、実家への郵便物対策など、クリアすべきハードルは低くありません。
自分の状況に合わせて、最適なルートを選んでください。
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どうしても融資がいい場合: 日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用し、郵便物の送付先をケアする。
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借金のリスクを避けたい場合: 投資家からの「出資」を目指す。プロトスターでは投資家マッチングのStartupListを運営しています。
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現在、登録済のベンチャー企業は8,500社以上、投資家数は3700名以上。 -
資金調達の方法は一つではありません。
「親にバレるかどうか」で悩むよりも、「事業を成功させるためにどの資金が必要か」という視点で動けるようになれば、あなたはもう立派な経営者です。
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