資金不足ではない。それでも、800万円の融資を選んだ理由
前職でエンジェル投資家やVCからのエクイティ調達を経験し、資金調達の実務にも携わってきた。それでも、自社の融資は一人で進めず、外部の支援を受けることを選んだ。
製造業向けのAI導入を手がける株式会社Algoboaの代表取締役CEO 三池ジュニオール氏だ。
同社は、金融機関からの融資により800万円を調達した。差し迫った資金不足があったわけではない。それでも、なぜ今、融資を選んだのか。
そして、自分でも進められる経験がありながら、なぜプロトスターに相談したのか。
その背景には、経営者にとって限りある時間とマインドシェアを、どこに使うかという判断があった。融資を選んだ理由と、あえて支援を依頼した理由を三池氏に聞いた。
- この事例のポイント
- 事業フェーズ:2期目
- 事業内容:製造業を中心としたAIシステム開発・導入支援
- 融資実績:金融機関からの融資により800万円を調達
- 主な資金使途:運転資金・AI活用への投資
- 融資を選んだ理由:新株発行による持株比率の希薄化を伴わず、経営の選択肢を広げるため
- 支援を依頼した理由:時間とマインドシェアを、代表にしかできない仕事へ集中させるため
株式会社Algoboa

プロトスター株式会社

製造業の現場に、AIを実装する
――――――まず、これまでのご経歴と事業について教えてください。
大学在学中からエンジニアとして活動し、大学3年のときに、AIスタートアップへCTO兼役員として参画しました。そこでは、エンジェル投資家やVCから資金を調達しながら、主に日本の製造業へAI技術を実装する事業に取り組んでいました。
前職で製造業向けのAI・DX支援に取り組むなかで、私自身、この領域に大きな面白さと将来性を感じるようになりました。その経験を生かして事業を続けたいと考え、Algoboaを創業しました。
私の地元は愛知県岡崎市で、自動車産業が盛んな地域です。製造業は、日本の経済を長く支えてきた産業でもあります。これまでの経験を生かしながら、引き続き製造業、特に自動車部品メーカーのDXに携わりたいと考えました。
―――――― 現在のAlgoboaでも、同じ領域に取り組んでいるのでしょうか。
はい。現在も、自動車部品メーカーをはじめとする製造業を中心に、AIシステムの開発や導入を支援しています。前職で取り組んできたことが、自分自身のやりたいことになり、現在の事業につながっています。
資金不足ではなく、経営の選択肢を増やしたかった
―――――― 融資を検討したきっかけを教えてください。
一番大きかったのは、経営の選択肢を増やしておきたいという考えです。手元にまったく資金がなかったわけでも、今すぐ大きな投資が必要だったわけでもありません。
ただ、Algoboa以外にも取り組んでいる事業があり、そちらは自分のリソースが先に出て、売上が入るまでに時間がかかります。事業のポートフォリオ全体を考えると、心理的なセーフティネットとして、手元資金に余裕を持たせておきたいと考えました。
事業で利益を積み上げていく方法もあります。一方で、当時のAlgoboaが利用を検討できる融資制度があり、条件や申込みのタイミングを踏まえると、今の段階で検討する意味があると判断しました。
――――――将来必要になるかもしれない資金を、先に持てる状態にしておくということでしょうか。
そうですね。融資によって手元資金に余裕ができたことで、必要なタイミングで投資や事業上の判断をしやすくなりました。
たとえば、今後エンジニアを採用することも選択肢の一つです。一方、弊社の場合は、AIツールやコーディングツールに投資することで、生産性を高められる可能性もあります。
AIを使いこなせるエンジニアと、そのエンジニアが活用できるAIツールへの投資を掛け合わせることで、対応できる案件を増やせる。アクセルを踏みたいときに動ける状態をつくっておきたいと考えました。

エクイティではなく、融資を選んだ理由
――――――前職ではエクイティ調達を経験されています。今回は、なぜ出資ではなく融資を選んだのでしょうか。
Algoboaについては、事業の方向性を考えながら、自分たちのペースで経営していきたいという思いがありました。
外部から出資を受ければ、新たな株主に対して、事業の方向性や成長方針を説明し、合意を形成する必要があります。AIが普及し、特に市場・環境変化が早い今、製造業向けのAI導入を今後も続けるのか、別の領域へ広げるのか。現時点では、そうした選択肢を残しておきたいと考えています。
――――――前職での経験も影響していますか。
前職でエクイティ調達を経験するなかで、資金を得られるメリットとともに、事業を転換する際には、バリュエーションや今後の方針について株主へ丁寧に説明し、合意を形成する必要があることも学びました。
もちろん、エクイティ調達が適した事業やタイミングもあります。ただ、現在の主力事業であるAIシステム開発は、現時点では巨額の先行投資を前提とする事業ではありません。
Algoboaの事業構造や、今後の方向性を考えた結果、今回は新株発行を伴うエクイティではなく、融資を選びました。

自分でもできる。それでも、融資支援を依頼した
――――――融資の申込みをご自身で進めることもできたと思います。それでも、外部に相談されたのはなぜですか。
最初のきっかけは、松尾さんとお会いしたことです。それまでは、融資自体があまり選択肢に入っていませんでした。
松尾さんと話すなかで、資金が必要になってから動くのではなく、余裕がある段階で融資を検討し、手元資金を厚くしておくこと自体に意味があると考えるようになりました。
相談した段階から、融資決定までに必要な準備を具体的にイメージできたことも大きかったです。実際に進めてみても、負担はほとんど感じませんでした。
――――――ご自身の時間の使い方という観点もありましたか。
Algoboaでは、私自身が開発の現場に入ることが多くあります。そのため、資金調達を含め、自分の経験だけで進めるよりも外部の知見を活用した方がよい領域については、必要に応じて支援を依頼する方針を持っています。
自分でも進められるとは思います。ただ、自分でできることと、自分でやるべきことは別です。
仮に自分で進めるために数十時間かかるとしたら、その時間で支援費用以上の価値を生み出せるのか。時間だけでなく、マインドシェアまで含めて考えるべきだと思います。
事業計画と段取り。支援を受けて変わったこと
――――――プロトスターへ相談して、特に整理が進んだのはどこでしょうか。
事業計画です。正直、自分の中でも、事業計画が曖昧だった部分がありました。
時間をかければ、自分でも事業計画を作れると思います。ただ、起業家が自社の計画を作ると、「事業はもっと伸びるはずだ」という期待が入りやすい。融資の申込みでは、将来への期待だけでなく、現時点の実績や見通しを踏まえた数字を示す必要があると気づきました。
弊社の実績や試算表を踏まえながら、事業を安定して運営するためのベースラインを一緒に整理してもらいました。
この計画に沿って進めた場合に、売上や資金繰りがどう推移するのかを把握できたことは大きかったです。自分だけでは、同じ形に整理できなかったと思います。
―――――― 投資家向けの事業計画とは、どのような違いを感じましたか。
私が以前作っていた事業計画は、将来の企業価値や、株主へどの程度のリターンを提供できるかという観点を重視していました。そのため、一定のリスクを取りながら成長するための投資も計画に入れます。
一方、今回、金融機関向けの計画を作るなかで重視したのは、売上やコストの根拠と、返済の見通しです。
高い成長率を示すだけではなく、その数字に実現可能性があるか、事業を継続しながら返済していけるかを説明する必要があると感じました。

融資決定までに必要な準備が、最初から見えていた
――――――進め方について、負担やストレスを感じた場面はありましたか。
ストレスはほとんどありませんでした。私自身の返信が遅くなってしまった場面はありましたが、進め方について大きな負担を感じることはありませんでした。
最初に、融資決定までに何が必要なのかという全体像を示してもらえたことが大きかったです。そのうえで、なぜ今、この準備が必要なのかを説明してもらえました。
融資決定までを逆算して、必要な行動が細かく整理されていました。連絡や回答が必要な場面でも、こちらから必要な情報を伝えると、文面のたたき台を用意してもらえたので、進めやすかったです。

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800万円の融資で、広がった経営の選択肢
――――――800万円の融資が決まったとき、率直にどう感じましたか。
この資金がなければ会社が立ち行かないという状況ではなかったため、特別に大きな感慨があったわけではありません。
ただ、融資が決まったことで、選択肢が増えると感じました。実際に入金され、資金をどのように活用していくか、改めて考えるきっかけにもなりました。率直に、うれしかったですね。
――――――具体的には、どのような選択肢が見えてきましたか。
Algoboaが関与するプロジェクトは、現在ほぼすべてが紹介経由です。融資によって、営業活動に取り組むことや、プロジェクト開始前に必要となるリソースを先に確保することも、検討しやすくなりました。
また、AIを使いこなせるエンジニアと、会社として活用できるAIツールへの投資を掛け合わせることで、生産性を高められる可能性があります。
これまでは案件数を積極的に増やしていませんでしたが、粗利や事業運営への影響を見ながら、対応できる案件を増やすことも選択肢に入るようになりました。
――――――融資以外に、プロトスターとの関わりから生まれたものはありますか。
現在一緒に事業へ取り組んでいる共同創業者との出会いも、松尾さんとのつながりから生まれました。出会って数か月で会社を一緒に経営しているので、非常に大きな変化だったと思います。
企業も紹介していただいていますし、今後も事業や資金調達について相談していきたいと考えています。
同じように迷っている経営者へ
―――――― どのような経営者が、どのタイミングで相談するとよいと思いますか。
一つは、今後の資金繰りに不安を感じ始めている経営者です。
ただ、本当に資金が厳しくなってからでは、検討できる選択肢が限られる可能性もあります。必要になる時期を見据えて、早めに相談する方がよいと思います。
もう一つは、私のように、今後の事業や資金調達をどうしていくか、まだ方向性を検討している段階の方です。
「今、1,000万円あったら何に使いますか」と聞かれて、すぐには答えられない。ただ、資金があれば選択肢が広がりそうだと感じている。そうした段階でも、融資を含む資金調達によって何ができるのか、将来の資金調達や事業の方向性も含めて相談することで、判断材料を得られると思います。
―――――― ご自身のように、融資を自分でも進められると考えている方へ伝えるとしたら。
自分で進めることも、一つの選択肢だと思います。
ただ、経営者が考えるべきなのは、手続きができるかどうかではなく、限られた時間をどこに使うことが、会社にとって最もよいのかということです。
外部の知見を借りることで、その分だけ本来の事業に集中できるのであれば、それも一つの経営判断だと思います。自分で進める場合と外部へ依頼する場合を比べて、自社にとってどちらがよいのかを一度考えてみてほしいですね。
融資が必要になる前に、選択肢を整理する
Algoboa社の事例が示すように、融資は、資金が不足してから検討するものとは限りません。
手元資金に余裕を持たせたい。必要なタイミングで投資できる状態をつくりたい。外部から出資を受ける前に、融資の可能性を知りたい。創業期に融資を検討する理由は、企業によって異なります。
プロトスターでは、事業フェーズ、資金使途、返済計画を踏まえ、融資の可能性や目指す金額、検討すべきタイミングを整理します。融資だけでなく、将来のエクイティ調達との組み合わせも含めてご相談いただけます。
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※融資の可否や金額、融資実行を保証するものではありません。事業内容や財務状況などを踏まえてご案内します。
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株式会社Algoboa
株式会社Algoboaは、製造業を中心にAIシステムの開発・導入を支援する会社です。社内ナレッジ検索(RAG)や業務エージェントなどの生成AI活用を、PoCで終わらせず、業務・データ・運用まで含めて設計し、現場に定着するところまで伴走します。開発を担う受託開発と、月額の伴走型AI顧問サービスの2本柱で、企業のフェーズに合わせた支援を提供しています。
こんな方におすすめ
・生成AIを業務に活用したいが、どこから手をつけるべきか整理できていない企業
・PoCまでは進んだものの、本番導入や現場への定着で止まっている企業
・製造業をはじめ、品質管理・技術文書・ナレッジ管理などの現場業務にAIを実装したい企業
・社内にAI人材がおらず、優先順位付けから実装まで伴走できるパートナーを探している企業大切にしている価値
「AIで何ができるか」よりも、「その会社が今、何をやるべきか」を先に考えることを大切にしています。技術的に可能なことと、経営として取り組むべきことは別です。限られた時間と予算をどこに使えば成果が最大になるのか、優先順位の整理から一緒に取り組みます。今後の展望
引き続き自動車部品メーカーをはじめとする製造業を中心に、AIシステムの受託開発を軸として事業を展開します。あわせて、月額の伴走型AI顧問サービスを拡充し、将来的にはAIとナレッジマネジメントを組み合わせた、熟練者の暗黙知の継承・事業承継支援にも取り組んでいく予定です。



