株式を希薄化せずに、希望額満額の1,000万円を確保した資金調達戦略
シードラウンドで3,000万円を調達したスタートアップが、その後、金融機関から希望額満額となる1,000万円の融資決定を受けた。全国の派遣会社・人材と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」を運営する、CLEAR INNOVATION株式会社だ。
エクイティで資金を確保した後、なぜ追加の出資ではなく融資も活用したのか。その背景には、株式を希薄化させずに成長資金を確保し、次回調達までの時間と選択肢を広げるという判断があった。
当初は融資に慎重だった山本さんが、何をきっかけに動き、どのような準備を経て希望額満額の決定に至ったのか。代表取締役CEOの山本凌大さんに聞いた。
- この事例のポイント
- 事業フェーズ:シード期・VCから3,000万円調達済み
- 融資実績:金融機関から希望額満額となる1,000万円の融資が決定
- 主な資金使途:運転資金
- 融資を選んだ理由:株式の希薄化を抑え、成長資金と次回調達までの時間を確保
- プロトスターへの相談から融資決定まで:約3か月
CLEAR INNOVATION株式会社

プロトスター株式会社

全国の派遣会社と、人手不足の現場をつなぐ
――――――まず、事業について教えてください。
弊社は「ハケンバンク」というサービスを運営しています。全国に多数ある派遣会社・人材と、人材を必要とする求人企業をつなぐプラットフォームです。
求人企業側には、どの派遣会社に相談すればよいか分からない、既存の取引先だけでは必要な人材を確保しきれない、といった課題があります。一方、派遣会社側にも、良い人材を抱えていても、求人企業との接点が限られ、十分に活躍の機会をつくれていないという課題があります。
求人情報と人材情報を私たちのプラットフォーム上で流通させることで、求人企業には必要な人材を迅速に届け、派遣会社には新たな取引機会をつくる。さらに、取引の透明性を高めることで、派遣スタッフの待遇改善にもつながる仕組みを目指しています。
―――――― 創業の経緯は。
創業は2023年8月17日、私が明治大学の2年生のときです。きっかけは、正直に言えば「このまま就活しても良いのかなと思った」というところからでした。
大学の授業に外部講師として来られた物流業の社長の話を聞いて、何を言っているのか半分も分からなかったのですが、面白そうだと思ったんです。小さい頃から極真空手を続けていて大人と接する機会が多かったのもあり、物怖じせずに授業後に話しかけて、いろいろ教えてもらいながら起業へ舵を切りました。
最初はWebデザインや資料作成を独学で覚えて、交流会で仕事をもらうところから始めました。その中で多くの中小企業の経営者と話すうちに、どこへ行っても人手が足りない、HR市場が最適化されていないという声を聞くようになった。特に物流や建設といったノンデスクワーク領域の人手不足が深刻だったので、この領域で人材業界の構造そのものを変えられないかと考え、ハケンバンクにたどり着きました。
現在は正社員も数名おり、2025年10月にVCのbasepartnersからシードラウンドで3,000万円を調達しています。
融資を知りながら、すぐには動かなかった理由
―――――― 融資という選択肢自体は、創業時からご存じだったと思います。それでもシード調達まで動かれなかった理由は。
率直に言うと、借り入れをすることに自信がなかった、少し怖かった、というのが正直なところです。
エクイティは融資のような返済義務がない一方、デットは返済計画を立てて返していく必要があります。その違いが、当時の自分には大きく感じられました。
なので、積極的にデットに動くことは、あえてしていなかった。というより、できていなかった部分がありました。
―――――― 何が、その見方を変えたのでしょうか。
先入観が大きかったのだと思います。学生起業は諸刃の剣で、業界の常識が何たるかを全く分かっていない状態なので、勝手に自分の偏見で融資を見ていたなと。
そこから、デットについての解像度が少しずつ上がっていきました。先輩経営者から「必要なときに備えて、資金調達の選択肢を早めに検討しておいた方がいい」と助言を受けたことや、金融機関の方々との対話を通じて理解が深まったことで、融資を前向きに考えるようになりました。
株式を薄めずに、成長投資の資金を確保する
―――――― シード調達後、あらためて融資を考えたきっかけは。
調達した後も、大小はあれどピボットを繰り返しながら事業の形を模索していました。ベンチャーにとって「時間をお金で買う」という思考は、すごく大事だと思っています。AIが出てきて市場環境がどんどん変わる中で、時間は非常に貴重なものです。
事業の方向性や必要な資金使途が見えてきた段階で、成長に必要な資金を早めに確保しておきたいと考えました。エクイティをしっかり調達した後にも、もう少し余裕を持って自由に動けるように、不安要素をなくせるように動こう、というタイミングが今でした。事業の方向性が定まってきたという、ビジネスサイドの要因もあります。
―――――― 追加のエクイティ調達ではなく、融資を組み合わせようと考えたのはなぜですか。
一つは、株式の希薄化がデットにはないという点が大きかったです。
先輩起業家や成長企業を見ていると、エクイティだけでなく、事業フェーズに応じてデットも組み合わせています。私たちも、株式を希薄化させずに資金を確保するとともに、将来の資金調達を見据えて、今から金融機関との関係を築いておきたいと考えました。
融資は「信頼の蓄積ゲーム」でもあると思うんです。だからこのタイミングで、中長期的・将来的なデット活用に向けて布石を置いておく。そういう意味合いでも、今回動きました。

初めての融資だからこそ、プロに相談する
――――――ご自身で進める選択肢もあったと思います。
自分で進めてみる選択肢もありましたが、初めてなので、何をどこまで準備すればよいのかも分からない状態でした。最初の融資だからこそ不確実性が高く、一人で手探りで進めるより、まずはプロに相談した方がよいと考えました。
その過程自体が自分の成長にもなり、デット調達の実務感覚をつかむことにもつながると思いました。それで今回、プロトスターさんにお願いしました。
――――――相談先としてプロトスターを選んだ決め手は。
私は20代前半で起業してからいろいろな失敗を経験してきたので、取引させていただく会社や人に対しては、正直かなり慎重に見てしまうところがあります。だからこそ、信頼できる人からの紹介はありがたい。今回はご紹介をいただいたことに加えて、以前たまたまイベントで松尾さんとお会いしていたご縁もありました。
決め手は、最初の面談です。まだ正式に支援をお願いする前の相談段階にもかかわらず、融資の可能性について、その根拠や必要な準備まで具体的に説明してくださいました。その真剣さと提案の具体性に信頼を感じ、初回の面談で「ここにお願いしよう」と決めました。
何事も、最後は人だと思っています。
――――――その後の伴走はいかがでしたか。
初めてのデット調達で分からないことも多かったのですが、初歩的な質問にも真摯に、スピーディーかつ的確に答えてくださいました。
「心強い」という言葉が一番しっくりきます。これだけ準備したうえで結果が難しければ、自分としても納得できると思えるくらい、徹底して支援していただきました。
一人で進めていたら、一番苦労していたこと
―――――― もしご自身だけで進めていた場合、特に苦労したと思う部分は。
一つに絞るなら、事業計画です。
私は数字は弱くない方だと思っています。ただ、事業計画を金融機関に提出できるレベルまで引き上げるのは、また別の難しさがありました。経営者として感覚的に持っていた数字を、定量的な根拠に落とし込み、金融機関に伝わる形に整理する。この点は特に助かりました。
事業計画や準備資料についても、「これで行きましょう」と曖昧に済ませるのではなく、疑問を持たれそうな点やリスクを一つひとつ丁寧に洗い出していただきました。何を改善すればよいかが明確になったことが、私にとって非常にありがたかったです。
―――――― 具体的に、知らなかったこととしては。
事業計画にリスクシナリオも織り込み、複数のケースで収支を検討するという考え方は、大きな学びになりました。
あとは、世間一般で言われる「エクイティを調達しているとデットを引きやすい」という話がありますよね。それがなぜなのか、どこまでが正しくてどこからは違うのか。定説を裏付ける理由まで、腑に落ちる形で教えていただいた。これは勉強になりました。
返済期間の考え方や、どの金融機関に相談すべきかといった点も、正直ほとんど分かっていなかったので、基礎から教えていただきました。

希望額満額の決定を支えた、事前準備と金融機関への説明
―――――― 満額決定につながったポイントは何だったと思いますか。
他の経営者にも参考にしていただける点を挙げるなら、事前準備を尽くして面談に臨むことだと思います。
金融機関との面談に向けて、必要書類や説明資料について、何をどう準備すべきかを一緒に整理していただきました。私はそれを全部紙に印刷して持っていったんです。そうしたら「ここまで最初から用意してくる経営者はなかなかいません」と言っていただき、事前準備に対して良い反応をいただきました。
金融機関が確認したいポイントを踏まえて資料を整理できたので、担当者の方にも事業内容や資金使途が伝わりやすかったと思います。必要書類を初回面談で全部お渡しできたので、面談後の追加確認や資料提出も最小限に抑えられました。
―――――― 実際の審査面談では、どのようなことを。
これは私のケースなので再現性は高くないかもしれませんが、金融機関側から聞かれる前に、こちらから一通り説明してしまいました。
まず5分ほど自己紹介を行い、その後、事業内容と事業計画を説明しました。「分からない点があれば質問してください」という形で、相手に疑問を残さないよう、こちらから先回りして説明したイメージです。
―――――― 金融機関目線で、特に参考になった点は。
事業計画の磨き込みと、必要資料の整理ですね。
投資家との対話では将来の成長性や事業の可能性が重視される一方、金融機関には、資金使途や数値計画、返済の見通しを具体的に説明する必要がありました。シード期は事業実績が限られることも多いため、事業計画の根拠を数値とロジックで丁寧に示すことが重要だと感じました。
経営者にとって当たり前のことでも、金融機関にはきちんと言葉と数字で伝える必要があります。想定される疑問やリスクを一つひとつ整理し、「なぜこの金額が必要で、どう返済していくのか」まで筋道を立てて説明する。ここは本当に勉強になりました。

資金の余裕が、経営判断の質を変える
――――――融資が決まったことで、何が変わりましたか。
今回申請したのは運転資金です。システム開発のために莫大な資金を得た、という類のものではありません。事業を成長させていくうえで、運転資金は非常に重要だと思っています。
運転資金に余裕が生まれることで、営業代行の活用など、マーケティングや営業への投資も検討しやすくなります。事業に必要な施策を、適切なタイミングで実行できることは大きいですね。
それ以上に大きいのは、経営者の精神面です。資金繰りでずっと参ってしまう経営者は少なくないと思います。
今回、1,000万円の融資が決まったことで、資金繰りに対する不安が和らぎ、より余裕を持って経営判断ができるようになりました。
――――――次の調達への影響は。
資金の残りを気にしながら次の調達を急ぐのではなく、「事業の状況を踏まえると、今が最適なタイミングだ」と戦略的に判断できるようになった。この点が大きいです。
今後の資金の見通しが立ったことで、より安心して前を向くことができています。
同じように迷っている経営者へ
―――――― 創業直後で、借り入れに不安を感じている経営者に伝えるなら。
事業の成長方針や資金調達の考え方は会社によって異なりますが、特にM&AやIPOを見据える経営者にとっては、株式を希薄化させずに資金を確保できる融資も、有力な選択肢になると思います。
創業初期は、限られた資金の中で自ら営業し、事業を立ち上げていくことも大切です。実際、私たちも地道な営業活動を続けています。そのうえで、一定の資金的な余裕を持つことは、不測の事態への備えにもなりますし、事業成長に向けた意思決定をしやすくすることにもつながると思います。
エクイティ調達では、資金調達の条件だけでなく、どの投資家と長期的な関係を築いていくかも重要です。だからこそ、資金面に余裕を持ち、次の株主や調達条件を慎重に検討する時間を確保したいと考えました。
まずは事業でしっかり売上をつくりながら、必要に応じて融資も活用し、そのうえで次の資金調達をじっくり考える。私なら、そうアドバイスします。バリュエーションや調達額だけにとらわれず、自社に合った方法で必要な資金を確保することが大切で、必ずしもエクイティだけに頼る必要はありません。資金繰りが厳しくなる前に、必要な時期や返済計画を見据えて、早めに融資を検討しておくことが重要だと思います。
―――――― では、すでにエクイティで調達済みの経営者には。
私自身、勉強になったのは、エクイティで資金を調達していることだけでは、融資の返済可能性を説明したことにはならないという点です。調達実績に加えて、事業の進捗や資金使途、今後の収支、返済の見通しを、金融機関に分かる形で示す必要があります。
外部資本を受け入れる場合、投資家ごとの方針や期待も踏まえながら、将来の資本政策を考える必要があります。特にM&AやIPOを見据えるなら、どこから資金を調達し、誰を株主として迎えるかは、その後の経営にも関わる重要な意思決定です。
だからこそ、株式を希薄化させずに資金を確保できる融資は、将来の選択肢を広げる手段の一つになります。エクイティ調達後にデットも組み合わせ、資金的な余裕をつくったうえで次の調達をじっくり考える。これも「お金で時間を買う」ということだと思っています。
―――――― 経験としての価値もある、と。
レイターステージでの大型のデット調達を考えたとき、今のうちから金融機関との関係を築き、将来の選択肢を広げておくという考え方もあります。
資金に余裕がある場合でも、必要性や返済計画を踏まえたうえで融資を検討し、実際の調達やその後の返済を通じて取引実績を積んでいく。デットで得られるのは、資金だけではないと思っています。
―――――― 最後に、相談先を探している方へ。
信頼できる先輩起業家に相談したり、実際に支援先と話してみたりしながら、自社の状況をきちんと理解し、必要な準備まで具体的に説明してくれる相手を見つけることが大切だと思います。
融資という選択肢を、具体的に相談する
CLEAR INNOVATION社の事例が示すように、創業初期・シード期やエクイティ調達後でも、融資が成長資金の選択肢になる場合があります。
プロトスターでは、事業フェーズや資金使途、返済計画を踏まえ、融資の可能性だけでなく、エクイティとの組み合わせや今後の資金調達まで見据えて整理します。
「自社は融資の対象になるのか」「いつ、いくら、どのように進めるべきか」という段階から、まずは無料でご相談ください。
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※融資の可否や金額、融資実行を保証するものではありません。事業内容や財務状況などを踏まえてご案内します。
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CLEAR INNOVATION株式会社
全国の派遣会社・人材と求人企業をつなぐプラットフォーム「ハケンバンク」を運営。求人企業・派遣会社・働く方の三者にとって、より良い人材マッチングの実現を目指しています。
こんな方におすすめ
人手不足に悩む物流・建設など、ノンデスクワーク領域の企業。これまで派遣の活用に課題を感じていた企業にもおすすめです。大事にしている価値
誠実性と透明性です。導入する派遣会社とは代表の山本さんが面談し、フォロー体制も確認。求人企業と派遣会社の双方が、安心して取引できる環境づくりを大切にしています。今後の展望
掲げる理念は「非常識を新常識に変える」。人材領域にとどまらず、これまで見過ごされてきた中小企業の現場の課題解決を目指しています。



