スタートアップが検討できる融資制度は、日本政策金融公庫の創業融資だけではありません。
創業前・創業直後に利用を検討しやすい「新規開業・スタートアップ支援資金」のほか、一定のVC等から出資を受けている会社向けの「スタートアップ支援資金」、新規性・成長性のある事業を対象とする「新事業育成資金」、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができる「資本性ローン」などがあります。
制度によって、対象者、融資限度額、返済期間、据置期間は異なります。ただし、限度額の大きい制度が、自社に最適な制度とは限りません。必要資金、資金使途、返済原資、事業フェーズを整理したうえで、制度と窓口を選ぶ必要があります。
この記事では、スタートアップが検討したい日本政策金融公庫の主要11制度と、融資制度に組み合わせられる3つの特例を比較します。あわせて、信用保証協会付き融資・制度融資・プロパー融資との違いや、エクイティとの組み合わせ方も解説します。
監修:松尾慎太郎(プロトスター株式会社 取締役 兼 ファイナンス事業責任者/情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授)
- この記事で分かること
- スタートアップが検討したい公庫の主要11制度
- VC等から出資を受けている会社が検討できる20億円枠
- 金融機関の資産査定上、自己資本とみなせる資本性ローン
- 融資制度と組み合わせられる3つの特例
- 国民生活事業と中小企業事業の違い
- 民間金融機関の融資とエクイティを含めた選び方
まず全体像|スタートアップ向け融資制度の早見表
創業期・シード期で初めて融資を検討する場合は、まず「新規開業・スタートアップ支援資金」が候補です。所定のVC等から出資を受けている、または出資が見込まれる場合は「スタートアップ支援資金」、新規性・成長性について所定の要件を満たす場合は「新事業育成資金」も検討できます。
自社の状況に近いものから、候補となる制度を確認しましょう。
| 会社・事業の状況 | 主に検討したい制度 | 取扱い・融資限度額 |
|---|---|---|
| 創業前、または 創業後おおむね7年以内 |
新規開業・ スタートアップ 支援資金 |
国民生活事業/ 7,200万円 |
| 一定のVC等から出資を 受けている、または 出資が見込まれる |
スタートアップ 支援資金 |
中小企業事業/ 直接貸付20億円 |
| 新規性・成長性のある 事業を事業化して おおむね7年以内 |
新事業育成資金 | 中小企業事業/ 直接貸付 7億2,000万円 |
| 女性、35歳未満または 55歳以上で、 所定の要件を満たす |
女性、若者/ シニア起業家 支援資金 |
事業区分により 取扱いが異なる |
| 廃業歴があり、 再び創業する |
再挑戦支援資金 | 事業区分により 取扱いが異なる |
| 認定支援機関の 指導・助言を受け、 新市場の開拓などに 取り組む |
中小企業 経営力強化資金 |
中小企業事業/ 直接貸付 7億2,000万円 |
| 経営革新計画等の 承認・認定を受けた、 新たな取組みを行う |
新事業活動 促進資金 |
国民生活事業/ 7,200万円 |
| 財務体質を強化し、 元金を期限一括で 返済する |
挑戦支援資本 強化特別貸付 (資本性ローン) |
国民生活事業/ 別枠7,200万円 |
| M&A・事業承継を行う | 事業承継・集約・ 活性化支援資金 |
国民生活事業/ 別枠7,200万円など |
| 自社の業務改善や 経営革新につながる IT投資を行う |
IT活用促進資金 | 中小企業事業/ 直接貸付 7億2,000万円 |
| 社会課題の解決を 目的とする事業を行う |
ソーシャル ビジネス支援資金 |
国民生活事業/ 7,200万円 |
本記事で紹介するのは、スタートアップに関係しやすい主要11制度です。公庫のすべての融資制度を網羅するものではありません。また、融資限度額は自社が借りられる金額を示すものではなく、融資額・期間・利率などは審査によって個別に決まります。
- 松尾慎太郎の実務コメント
- 制度一覧を見ると、融資限度額の大きい制度から選びたくなります。しかし、私が最初に確認するのは「何に、いつ、いくら必要か」「どの収入から返済するか」です。必要額と返済計画を整理したあとに制度を当てはめる方が、資金調達後の経営まで含めて無理のない設計になります。
公庫の窓口は2つに分かれている
日本政策金融公庫には、国民生活事業と中小企業事業があります。
| 窓口 | 主な特徴 |
|---|---|
| 国民生活事業 | 小規模事業者への小口融資を中心に取り扱う。 1先あたりの平均融資残高は約800万円。 創業予定者も主な対象 |
| 中小企業事業 | 中小企業者への長期資金を中心に取り扱う。 1先あたりの平均融資金額は約9,000万円。 短期運転資金は取り扱わない |
これは事業ごとの一般的な特徴であり、希望額だけで窓口が決まるわけではありません。会社規模、事業内容、資金使途、出資元、認定の有無など、制度ごとの対象要件を確認する必要があります。
1.新規開業・スタートアップ支援資金|創業期の基本
新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とする、国民生活事業の制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 新たに事業を始める方、または 事業開始後おおむね7年以内の方 |
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 上記の返済期間のうち5年以内 |
| 担保・保証人 | 希望を聞いたうえで相談 |
利用には、適正な事業計画を策定し、その計画を遂行する能力があると認められることが必要です。
創業前、または事業開始後税務申告を2期終えていない方には、原則として無担保・無保証人、利率の引下げなどの取扱いがあります。自己資金について一律の最低額・割合は利用要件として示されていませんが、必要資金をどう調達し、どの収入から返済するかは審査で確認されます。
2025年3月に「新規開業資金」から現在の名称へ変更されました。旧制度を説明する記事と混同せず、申込み時点の条件を確認してください。
(出典:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」「創業融資のご案内」)
条件、自己資金、必要書類、創業計画書の準備は、日本政策金融公庫の創業融資で詳しく解説しています。
2.スタートアップ支援資金|所定のVC出資などが要件となる20億円枠
中小企業事業が取り扱う制度です。事業計画を策定して成長を図る会社のうち、所定の出資・選定要件を満たす会社が対象になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 直接貸付20億円 |
| 資金使途 | 設備資金・長期運転資金 |
| 返済期間 | 設備資金・運転資金とも20年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも10年以内 |
| 保証人 | 無保証人 |
| 担保 | 設定の有無・種類などを相談のうえ決定 |
対象となるのは、次のいずれかに該当する会社などです。
- 対象となる会社
- 日本ベンチャーキャピタル協会の会員(賛助会員を除く)等から出資を受けている、または出資が見込まれる会社と、その100%出資子会社
- 中小企業基盤整備機構または産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合等から出資を受けている、または出資が見込まれる会社と、その100%出資子会社
- J-StartupまたはJ-Startup地域版に選定された会社と、その100%出資子会社
すべてのVC・投資家からの出資が対象になるわけではありません。また、「出資が見込まれる方」も対象に含まれますが、相談すれば利用できるという意味ではなく、公庫による確認・審査があります。
新株予約権付融資という選択肢
本制度には、会社が発行する新株予約権を公庫が取得し、社債の取得または融資によって無担保で資金を供給する仕組みもあります。
公庫は新株予約権を行使して株式を取得せず、原則として、株式公開時など一定の条件に達した場合に経営責任者などへ売却します。通常の融資とは条件や資本政策への影響が異なるため、新株予約権の割合や将来の売却条件を確認して検討してください。
(出典:日本政策金融公庫「スタートアップ支援資金」)
- 松尾慎太郎の実務コメント
- スタートアップの資金調達は、融資かエクイティかの二者択一ではありません。返済原資を見込める部分は融資、収益化まで時間がかかる研究開発やプロダクト投資はエクイティというように、資金使途によって分けて考えることが重要です。出資金と融資をそれぞれ何に使うのか、次回調達までの資金繰りと一体で設計します。
3.新事業育成資金|新規性・成長性のある事業が対象
新しい技術の活用や、特色ある商品・サービスによって市場を創出・開拓し、高い成長性が見込まれる中小企業者を支援する制度です。中小企業事業が取り扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象 | 高い成長性が見込まれる新たな事業を行い、 事業化後おおむね7年以内などの要件を満たす方 |
| 融資限度額 | 直接貸付7億2,000万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金5年以内、運転資金2年以内 |
利用には、事業化からの年数だけでなく、公庫の成長新事業育成審査会による新規性・成長性の認定、または公庫が定める「技術・ノウハウ等に新規性がみられる事業」への該当などが必要です。さらに、中小企業事業による継続的な経営指導によって、円滑な事業遂行が可能と認められることも要件です。
単に「新しいサービス」「成長市場にいる」というだけで対象になる制度ではありません。研究開発の内容、知的財産、補助金の採択、事業化の進捗などを確認して検討します。
(出典:日本政策金融公庫「新事業育成資金」)
4.女性、若者/シニア起業家支援資金|属性と事業要件
女性、35歳未満または55歳以上の方による創業を支援する仕組みです。国民生活事業と中小企業事業では、取扱いが異なります。
国民生活事業では、「新規開業・スタートアップ支援資金」の特別利率の対象要件として扱われます。
中小企業事業では、女性、35歳未満または55歳以上で、新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方を対象とする制度があります。ただし、年齢・性別だけで対象になるわけではなく、公庫が定める技術・ノウハウ等の新規性に関する事業要件も確認が必要です。
| 項目 | 中小企業事業の主な条件 |
|---|---|
| 融資限度額 | 直接貸付7億2,000万円、 代理貸付1億2,000万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも2年以内 |
(出典:日本政策金融公庫「女性、若者/シニア起業家支援資金」)
5.再挑戦支援資金|廃業歴がある方の再チャレンジ
過去に廃業した経験がある方が、再び開業する場合に検討できる制度です。国民生活事業と中小企業事業で取扱いがあります。
中小企業事業では、新たに開業する方または開業後おおむね7年以内の方で、次の条件をすべて満たすことが必要です。
- 中小企業事業の対象要件
- 廃業歴等を有する個人、または廃業歴等を有する経営者が営む法人である
- 廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みなどがある
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものなどである
| 項目 | 中小企業事業の主な条件 |
|---|---|
| 融資限度額 | 直接貸付7億2,000万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金15年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも2年以内 |
国民生活事業では条件・返済期間等が異なるため、該当する窓口の情報を確認してください。
(出典:日本政策金融公庫「再挑戦支援資金」)
6.中小企業経営力強化資金|認定支援機関の指導を受けて取り組む
認定経営革新等支援機関による指導・助言を受け、経営革新や異分野の中小企業との連携による新事業分野の開拓などに取り組む中小企業者を支援する制度です。新規開業を行う場合も対象に含まれます。主な対象には、次の条件を満たす方が含まれます。
- 主な対象要件
- 経営革新または異分野の中小企業との連携によって、市場の創出・開拓などを行う
- 事業計画書を策定している
- 認定経営革新等支援機関による指導・助言を受けている
| 項目 | 主な条件 |
|---|---|
| 融資限度額 | 直接貸付7億2,000万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも2年以内 |
認定支援機関の関与だけで融資が決まるわけではありません。事業計画の実現可能性や返済の見通しなどについて、公庫の審査があります。
(出典:日本政策金融公庫「中小企業経営力強化資金」)
7.新事業活動促進資金|計画の承認・認定や新たな取組み
経営革新計画・経営力向上計画の承認や認定を受けた方、新たな取組みによって一定の経営向上を図る方、第二創業に取り組む方などが対象となる国民生活事業の制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも2年以内 |
対象には、経営革新計画などの承認・認定を受けた方だけでなく、新たな取組みにより2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方、技術・ノウハウ等に新規性がみられる方なども含まれます。自社がどの要件に該当するかを確認してください。
(出典:日本政策金融公庫「新事業活動促進資金」)
8.挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)|自己資本とみなせる融資
資本性ローンは、金融機関の資産査定上、自己資本とみなすことができる融資です。スタートアップ、新事業展開、海外展開、事業再生などに取り組む企業の財務体質強化や、VC・民間金融機関等からの資金調達の円滑化を支援します。国民生活事業における主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円(別枠) |
| 返済期間 | 5年1カ月以上20年以内 |
| 返済方法 | 期限一括返済。利息は毎月支払い |
| 担保・保証人 | 無担保・無保証人 |
| 利率 | 融資後1年ごとに、直近の業績と 返済期間に応じて決定 |
税引後当期純利益が0円未満の場合、2026年9月4日時点では、返済期間にかかわらず年0.50%です。利益が0円以上の場合は、返済期間に応じた金利が適用されます。
利用するには、新規開業・スタートアップ支援資金など、指定された融資制度の対象となることに加え、地域経済活性化にかかる事業を行うことなどの要件があります。
(出典:日本政策金融公庫「挑戦支援資本強化特別貸付」)
- 松尾慎太郎の実務コメント
- 資本性ローンは「元金を返さなくてよい融資」ではありません。融資期間中の元金返済はありませんが、期限には一括返済が必要です。自己資本とみなされることや赤字時の金利だけでなく、満期時の返済原資まで含めて判断する必要があります。
デットとエクイティの中間に位置する調達手段の位置づけはデットファイナンスとはで整理しています。
9.事業承継・集約・活性化支援資金|M&A・事業承継に使う
事業承継やM&Aによる事業の承継・集約を行う場合に検討できる制度です。事業を引き継ぐ側に加え、一定の要件を満たす買い手側も対象になり得ます。国民生活事業における主な条件は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 別枠7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも5年以内 |
株式・事業用資産の取得資金、PMIに必要な資金なども、対象要件と資金使途に該当すれば検討できます。M&Aを成長戦略に含めるスタートアップは、買収の実行可能性や買収後の返済原資も含めて確認しましょう。
(出典:日本政策金融公庫「事業承継・集約・活性化支援資金」)
10.IT活用促進資金|自社の情報化投資に使う
情報技術の活用によって、自社の業務改善、情報交換の高度化、ネットワーク上の取引、経営革新などに取り組む中小企業者を支援する制度です。中小企業事業が取り扱います。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 直接貸付7億2,000万円、 代理貸付1億2,000万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも2年以内 |
ITサービスを提供している会社だから対象になるのではなく、原則として、自社が情報化投資を行う際の制度です。対象となる投資・計画要件と資金使途を確認してください。
(出典:日本政策金融公庫「IT活用促進資金」)
11.ソーシャルビジネス支援資金|社会課題の解決を事業にする
NPO法人、保育・介護サービス事業を営む方、社会課題の解決を目的とする事業を営む方などを対象とする、国民生活事業の制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円 |
| 返済期間 | 設備資金20年以内、運転資金10年以内 |
| 据置期間 | 設備資金・運転資金とも5年以内 |
| 利率 | 事業内容・対象要件により 基準利率または特別利率 |
「社会に役立つ事業」という説明だけで対象になるわけではありません。どの社会課題を、どの事業によって解決するのか、公庫の定める対象要件に該当するかを確認します。
(出典:日本政策金融公庫「ソーシャルビジネス支援資金」)
12.融資制度と組み合わせられる3つの特例
次の3つは、それ自体が資金を貸し付ける本体制度ではなく、対象となる融資制度に組み合わせて利用する特例です。
| 特例 | 主な内容 |
|---|---|
| 経営者保証免除特例制度 | 所定の要件を満たす法人について、 経営者保証を免除 |
| 創業支援貸付利率特例制度 | 創業前または税務申告を2期 終えていない方について、 対象制度の利率を引下げ |
| 賃上げ貸付利率特例制度 | 所定の賃上げ要件を満たす方について、 対象制度の利率を一定期間引下げ |
経営者保証免除特例制度
経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人で、所定の要件を満たす場合に、経営者保証を免除する制度です。
要件の一つとして、法人と代表者個人の資産・経理が明確に分離されているなど、法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていることを公庫が確認できることが挙げられています。ただし、創業期や新規性のある事業、金融機関との協調対応など、複数の対象区分があるため、該当要件を個別に確認してください。
(出典:日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」)
創業支援貸付利率特例制度
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を2期終えていない方が対象です。
各種融資制度に定める利率から原則0.65%、雇用の拡大を図る場合は0.9%が引き下げられます。一部、利用できない融資制度があります。
(出典:日本政策金融公庫「創業支援貸付利率特例制度」)
賃上げ貸付利率特例制度
事業開始後3カ月以上で、雇用者給与等支給額の総額を、最近の決算期と比較して2.5%以上増加させる見込みがある方が対象です。
対象となる融資制度の利率から、貸付日より2年間、0.5%が引き下げられます。利率の下限は0.3%です。
(出典:日本政策金融公庫「賃上げ貸付利率特例制度」)
特例ごとに、適用できる融資制度と要件が定められています。どの特例を併用できるか、実際にどの利率が適用されるかは、公庫へ確認してください。
日本政策金融公庫以外の融資はどう位置づけるか
スタートアップの融資は、公庫だけで完結するとは限りません。所在地、事業実績、既存取引、必要額などに応じて、民間金融機関の融資も比較します。
| 融資の種類 | 主な特徴 |
|---|---|
| 信用保証協会付き融資 | 信用保証協会の保証を付けて 金融機関から借りる。 原則として信用保証料が必要 |
| 自治体の制度融資 | 自治体・金融機関・信用保証協会が 連携する仕組み。 利率や保証料の補助などは 自治体ごとに異なる |
| プロパー融資 | 信用保証協会の保証を付けず、 金融機関が自らリスクを負って融資する |
創業期には、公庫と信用保証協会付き融資を同時期に検討する方法もあります。ただし、同じ資金使途を重複して調達できるとは限りません。必要額、資金使途、申込状況を双方へ正確に伝え、協調の可否を確認します。
制度融資は、自治体によって融資限度額、利率、保証料補助などが異なります。本店所在地の自治体と、取引を希望する金融機関の制度を確認してください。
プロパー融資は金融機関が自ら審査・判断する融資であり、可否や条件は個社ごとに異なります。プロパー融資とはで、保証協会付き融資との違いを解説しています。
スタートアップによる融資活用事例
ここでは、StartupListが支援した2社の事例を紹介します。以下は個別の融資事例であり、一般的な融資額の相場を示すものではありません。
シード調達後に1,000万円の融資が決定|CONFLICT
株式会社CONFLICT(旧:CLEAR INNOVATION株式会社)は、シードラウンドで3,000万円を調達した後、1,000万円の融資決定を受けました。
株式の希薄化を伴わずに成長資金を調達し、将来を見据えて金融機関との関係を築くことも、融資を検討した理由です。支援では、事業計画の根拠、必要資料、事業が計画どおり進まない場合のシナリオなどを整理しました。
創業直後に800万円の融資が決定|Algoboa
株式会社Algoboaは、創業直後に800万円の融資決定を受けました。代表の三池氏は、以前CTOとして関わったAIスタートアップでVC調達を経験しています。
今回は、持株比率の希薄化を伴わずに経営の選択肢を広げることを重視。融資支援を活用することで、自身の時間を事業に集中させるという判断もありました。
スタートアップが融資制度を選ぶ5つの手順
1.必要資金と資金使途を積み上げる
人件費、外注費、開発費、広告費、設備費などについて、「何に、いつ、いくら使うか」を整理します。制度の融資限度額から借入希望額を逆算しないことが重要です。
2.返済原資と資金繰りを確認する
売上、粗利益、入金時期をもとに、元金と利息を支払い続けられるかを確認します。次回のエクイティ調達が予定どおり決まることだけを返済の前提にしないようにしましょう。
3.会社・代表者・事業の条件を整理する
設立時期、税務申告の期数、代表者経歴、株主・出資元、技術の新規性、認定・補助金、既存借入などを整理します。
4.公庫の窓口・候補制度・特例を確認する
国民生活事業と中小企業事業のどちらへ相談するか、候補となる融資制度・特例は何かを確認します。制度名だけで自己判断せず、公庫へ確認することも大切です。
5.エクイティ・民間融資との順番を決める
売上や入金の見通しがあり、返済原資を説明できる場合は、融資を先に検討する余地があります。研究開発やプロダクト開発に先行投資が必要で、収益化まで時間がかかる場合は、エクイティとの組み合わせを検討します。
- 松尾慎太郎の実務コメント
- スタートアップは、売上や利益だけでは事業の可能性を説明しきれないことがあります。代表者の経歴、開発の進捗、顧客との商談、受注の確度も重要な説明材料です。ただし、将来性を語るだけではなく、売上・入金・返済の計画まで一貫して数字に落とし込む必要があります。
よくある質問
Q.スタートアップ向けの融資制度は全部でいくつありますか?
A.「スタートアップ専用の制度が一律に何種類ある」とは数えられません。公庫には国民生活事業と中小企業事業があり、創業、成長投資、事業承継、IT活用など目的別の制度と、本体の融資に組み合わせる特例があります。本記事では、スタートアップに関係しやすい主要11制度と3つの特例を紹介しています。
Q.VCから出資を受ける前でも、20億円枠を相談できますか?
A.中小企業事業のスタートアップ支援資金では、所定のVC等から出資を受けることが「見込まれる方」も対象に含まれます。ただし、出資見込みの確認方法や最終的な取扱いは公庫の審査によります。
Q.赤字でも融資を受けられますか?
A.赤字だけを理由に一律に判断されるわけではありませんが、赤字の理由、今後の売上・利益、資金繰り、返済原資を説明する必要があります。制度の対象に該当しても、審査によって希望に沿えない場合があります。
Q.複数の制度や特例を組み合わせられますか?
A.融資限度額が別枠とされている制度や、本体の融資制度と組み合わせる特例があります。ただし、制度・特例ごとに対象要件と併用条件が異なります。申込先の窓口へ確認してください。
Q.どの制度を選べばよいか分からなくても相談できますか?
A.StartupListでは、利用したい制度や借入希望額が固まっていない段階から相談できます。必要資金、資金使途、事業フェーズ、エクイティ調達の予定などを確認し、候補となる調達方法を整理します。
Q.公庫へ直接申し込めますか?
A.申し込めます。公庫は事前相談やインターネット申込みを受け付けており、支援会社の利用は必須ではありません。日本政策金融公庫「お手続きの流れ」で確認できます。
自社に合う融資制度を、資金調達全体から整理しませんか?
融資制度を選ぶ目的は、限度額の大きい制度を見つけることではありません。事業に必要な資金を適切な時期に調達し、返済負担と将来の資本政策を両立させることが重要です。
- 松尾慎太郎の実務コメント
- 融資は、手元資金が尽きてから相談するより、資金に余裕がある段階で検討する方が選択肢を整理しやすくなります。売上が計画より遅れる場合や、エクイティ調達が長引く場合も想定し、「いつまでに、どの資金を調達するか」から逆算して動くことをおすすめしています。
StartupListを運営するプロトスターは、融資とエクイティの双方を踏まえ、次の内容を一緒に整理します。
- ご相談いただける内容
- 現在の事業フェーズで検討できる融資制度・金融機関
- 必要資金、資金使途、借入希望額、返済計画
- 事業計画書・代表者経歴で説明すべき内容
- エクイティ調達との組み合わせ方と進める順番
希望額や利用したい制度が固まっていない段階でも、ご相談いただけます。
融資支援は着手金0円・完全成功報酬です。事業計画の作成支援や面談シミュレーションを通じて、経営者ご自身が事業の強みと資金計画を説明できるようサポートします。
※支援内容・料金の詳細はサービスページをご確認ください。融資の可否・金額・条件は、金融機関の審査により決定されます。
エクイティ調達も検討している場合は、StartupListで投資家を探すことができます。StartupListには1万社以上のスタートアップと3,000名以上の投資家が登録しており、条件で絞り込んで直接オファーを送れます。
この記事の監修者
松尾慎太郎(プロトスター株式会社 取締役 兼 ファイナンス事業責任者/情報経営イノベーション専門職大学 客員准教授)
スタートアップを中心に、創業融資をはじめとする融資と、エンジェル投資家・VC・CVC・事業会社からのエクイティによる資金調達を支援。起業家と投資家をつなぐ「StartupList」の運営に携わり、資金調達戦略の策定、投資家紹介、資本政策の検討まで伴走する。創業期の資金調達からM&Aまで、事業フェーズに応じた戦略の策定と実行を一貫して支援。



