1. TOP
  2. >
  3. 記事TOP
  4. >
  5. ユーザーインタビュー
  6. >
  7. 累計9億円超を調達したディープテックスタートアップが、創業初期にStartupListを活用した理由
累計9億円超を調達したディープテックスタートアップが、創業初期にStartupListを活用した理由

累計9億円超を調達したディープテックスタートアップが、創業初期にStartupListを活用した理由

ユーザーインタビュー
2026.09.07

技術力だけでは届かない。外側にいる投資家にどう伝え、チャンスを広げるか──ディープテックの初期資金戦略

 

うつ病をはじめとする精神疾患に対して、VR技術を用いた治療法を開発する株式会社BiPSEE2026年8月にシリーズAの2ndクローズを完了し、累計調達額は9.9億円となった。
治験と薬事承認という長い時間軸の中で、同社はどのように資金をつないできたのか。そして創業初期、まだ実績が少ない段階で、投資家との接点をどう広げてきたのか。CPOの小松尚平さんに聞いた。

 

 

この事例のポイント
事業フェーズ:治験(検証的試験)実施中、薬事承認取得を目指す段階
累計調達額:9.9億円(NEDO助成金を含む)
資金の種類:エクイティとNEDO助成金
資金調達ラウンド:プレシリーズA、シリーズA 1st・2ndクローズ
直近の引受先:京都大学イノベーションキャピタル、JICベンチャー・グロース・インベストメンツ

 

 

株式会社BiPSEE

 取締役CPO 小松 尚平

1989年(平成元年)生まれ。VR研究者、デザインエンジニア。株式会社BiPSEE 取締役CPO、東京大学大学院 特任研究員、高知大学医学部 特任講師、一般社団法人デザインシップ理事。東京大学では、キャンパスウェルビーイング推進アドバイザリーボード委員およびブランドスタジオ アドバイザーも兼任。

港区平和都市宣言40周年事業実行委員会、経済産業省エンタメ・クリエイティブ産業政策研究会、デザイン白書 2024 などに参加。主な受賞歴に「グッドデザイン賞」「日テレイマジナリウムアワード2023 XR部門大賞」「JAPAN Metaverse Awards 2025 ベストプロトタイプ賞」など。

 

 

 

VRデジタル療法とは何か

 

――――――まず、BiPSEEが開発されているVRデジタル療法について教えてください。

 

VR技術を使って、うつ病などの精神疾患の治療を支援するプロダクトです。

医師から処方される治療アプリのVR版が近いと思います。患者さんはVRゴーグルとスマートフォンのアプリを使って、認知行動療法にもとづくセッションをご自身で進めていきます。

VRを使う理由は、没入感にあります。ネガティブな考えで頭がいっぱいになっている状態から、視界ごと環境を切り替えて、自分の考えを少し離れたところから眺められるようにする。この体験は、VRだからこそつくりやすいものだと考えています。

 

―――――― うつ病、そして反すうに着目された理由は何でしょうか。

 

代表で心療内科医の松村が、自身の臨床の中で、反すうが強い人には抗うつ薬が効きにくいという点に着目したことが出発点です。

反すうとは、過去の後悔や出来事を何度も繰り返し考えてしまう、ネガティブなグルグル思考のことです。多くの方が日常的に経験しているものでもあります。ただ、その回数や時間が極端に増えると、うつ病の原因になったり、症状を悪化させたりすることが知られています。逆に、うつ病になると反すうが強くなるという傾向もあります。

うつ病の治療には抗うつ薬が使われますが、反すうが強い人には効きにくい。私たちが取り組んでいるVRデジタル療法は、いわばデジタル創薬にあたります。薬だけでは解決が難しい領域だからこそ、大きな期待をいただいていると感じています

 

――――――  現在はどの段階にありますか。

 

薬事承認の取得に向けた治験のうち、検証的試験と呼ばれる段階です。医薬品でいえば、承認前の最終段階の臨床試験にあたります。

ここに至るまでに、2024年にプログラム医療機器に係る優先的な審査等の対象品目の指定を受け、2025年に探索的試験を完了しました。この治験をやり切って薬事承認を取得し、患者さんに届ける。それが目の前の目標です。

 

 

創業初期、投資家との出会いをどう広げたか

 

―――――― StartupListの登録を決めたきっかけは何でしたか。

 

運営されているプロトスターの方々を、もともと知っていたんです。そういう安心感があったので、まず使ってみようと思いました。登録前に不安や迷いは、特にありませんでした。

 

――――――  使い始めた背景には、何があったのでしょうか。

 

当時はメディア露出や登壇などの対外的な発信も少なく、ネットワークがほとんどない状態でした。新しい投資家との出会いが、エンジェル投資家や既存株主からのご紹介に限られていたんです。

ご紹介はとてもありがたいのですが、お会いできる方はどうしても既存株主や知人の周辺に限られます。ラウンドを重ねると一巡してしまって、新しい出会いが広がっていかない。しかも医療ドメインに理解のある投資家に偏りがちで、接点の絶対数が足りないという感覚がありました

もっと広く繋がりたい。そう考えて、StartupListを活用しました。

期待していたのは、まずその母集団を広げることです。こちらから探しに行けるだけでなく、登録しておけば投資家の側から見つけていただける。それに加えて、自分たちの説明が医療を専門としない方にどこまで通じるのかを試す場になるとも思っていました。

 

 

専門家向けの説明を、広い投資家に伝わる形へ

 

―――――― プロフィールを作る際、どのような準備をされましたか。

 

最初に出資してくださった投資家の方々は、医療ドメインやうつ病、VR事業に詳しい方々でした。ですから、当初の説明はかなり専門的な内容だったんです。相手が分かってくれる前提で書いていました。

ただ、ステージが上がるにつれて、より広い投資家や事業会社に向けた文章を準備しなければいけないと感じるようになりました。StartupListには幅広い投資家が登録されているので、初めて見る方が読んでも分かる形に整理し直しました。

まず、専門用語を日常の言葉に置き換えました。たとえば反すうは、そのままでは伝わらないので、ネガティブな考えを頭の中で繰り返してしまう状態と言い換える。治験や薬事承認のプロセスも医療の外の方には馴染みがないので、自分たちがいまどの位置にいて、承認まで何が残っているのかがひと目で分かる形に整理しました。

話す順番も変えました。専門家向けには技術やエビデンスから入れましたが、幅広い投資家に向けては、うつ病という課題の大きさと、なぜ既存の治療だけでは足りないのかという構造から入る。技術の詳細はそのあとです

 

――――――  実際に投資家と対話される中で、気づきはありましたか。

 

ある投資家の方とお話ししたとき、自分たちが語っていた将来像が、実質的に数年先の開発計画になっていることに気づきました。うつ病向けの製品で治験をして、承認を取って、という目の前のロードマップに終始していたんです。

医療の世界では、確実に言えることしか言わないよう訓練されるので、どうしてもそうなりがちです。

ただ、反すうのような思考パターンはうつ病に限った話ではありませんし、精神科医療の担い手不足という課題も残り続けます。その先にどんな医療をつくるのか。投資家の方が見ていたのはそこでした。

以来、大きな絵を先に話して、目の前の計画はその通過点として位置づけるようにしています

 

 

9年間、どう資金をつないできたか

 

―――――― 創業から現在までの資金調達の流れを教えてください。

 

研究開発の結果がひとつずつ出るたびに、それが資金調達に結びついてきました。

創業時はエンジェル投資、2021年のプレシリーズAはプロダクト開発費、その後は臨床研究の実施前に研究開発費を充てる目的で調達しています

プレシリーズAは、ちょうど私が開発責任者として参加したタイミングでした。チームができたタイミングでもあります。

 

 

―――――― シリーズAを1stクローズと2ndクローズに分けられた理由は何でしょうか。

 

シリーズAは、治験費用と研究開発費に充てるための調達でした。出資いただく方々により納得感の高い形で判断していただくため、1stクローズと2ndクローズに分けています。1stクローズから2ndクローズまでの間に、事業の確度は大きく高まりました。

 

 

助成金とエクイティをどう使い分けたか

 

―――――― NEDOの助成金も活用されていますね。どのような位置づけだったのでしょうか。

 

ディープテックスタートアップとして、研究開発の部分では公的資金を活用しています。

NEDOのように1億円を超える大きな助成金は、そう多くありません。採択されること自体が簡単ではないのですが、ちょうど国内外での実証が始まり、実用化に向けた研究開発が加速していたタイミングだったので、私たちの状況に合うものを取りに行きました。

採択されたのは、2023年度のNEDOディープテック・スタートアップ支援基金/ディープテック・スタートアップ支援事業で、テーマはうつ病患者向けVRデジタル療法の開発です。

ディープテックは、売上が立つずっと前の段階に研究開発費が集中します。それをすべてエクイティで賄おうとすると、創業初期に多くの株式を手放すことになる。研究開発の中核を助成金で進められたことは、希薄化を抑える意味でも大きかったです。エクイティか助成金かではなく、フェーズごとに両方を組み合わせて設計する。それがディープテックの資金戦略の基本だと思っています

 

―――――― 助成金と、調達した資金の使い分けはどうされていますか。

 

助成金は、申請できる金額や用途が決まっています。基本的には研究開発に関する用途に使うものです。採択課題というものがあって、私たちの場合はVRデジタル療法の部分にあたります。

ただし、必ずしも全額が補助されるわけではありません。私たちが採択された助成金にも、補助率は2/3までという規定がありました。

BiPSEEの事業は、うつ病治療のためのVR開発だけではなく複数あります。研究開発費がかかる部分には助成金を活用しつつ、全体としては調達した資金と組み合わせて運用する。そういうバランスでやってきました。

 

――――――  助成金は株式を出さず、返済義務もないものですね。

 

はい。株式は出しませんし、返済もありません。

 

 

投資家に何を評価され、どこを問われたか

 

―――――― これまでの資金調達で、投資家からどのような点を評価されましたか。

 

大きく3つあると思っています。

1つ目は、うつ病という疾患領域の市場の大きさです。

2つ目は、組織体制が整ってきたこと

3つ目は、優先審査品目への指定や試験の結果など、マイルストーンごとにひとつずつ実績を残してきた点です。

 

―――――― 逆に、厳しく確認された点はありますか。

 

初めて挑戦する領域ですから、その部分は厳しく見られています。具体的には、治験の見通しと、承認後にどう医療現場へ届けていくかという、社会実装に関する問いが中心でした。

ただ、マイルストーンを達成するごとに、ひとつずつ評価していただいていると感じています。

 

 

これから資金調達に臨む起業家へ

 

――――――最後に、これから調達に臨む起業家へメッセージをお願いします。

 

起業家は、どうしても事業に取り組みすぎて、ステークホルダーとの繋がりを持てないことがあると思います。

ベンチャーは、専門分野については誰よりも詳しくなります。ただ、そのぶん視野が狭くなりがちですStartupListのようなサービスに登録することで、広い視野を持てますし、自分たちのピッチや伝え方も変えられる。登録できたことは、とても良いきっかけになりました

それから、早い段階で投資家と接点を持っておくと、当時お会いした方が後に立場を変えられたり、自分たちの調達がうまくいったときに次の繋がりが生まれたりします。どこがどうチャンスになるか分からないので、早く動いて損はないと思います。

もうひとつ。ステージが上がるにつれて、自分たちが誰よりも詳しい人間にならなければいけません。当時は投資家の方々が自分たちより詳しいアドバイザーのような存在でしたが、今は違います。自信を持って取り組んでほしいと思います。

 

  • ※開発中のVRデジタル療法は治験段階であり、薬事承認前です

  • ※累計調達額9.9億円は、NEDO助成金を含む金額です

 

 

投資家との接点を、早い段階から

 

StartupListでは、会社情報を登録することで、スタートアップへの投資を検討するVC・CVC・事業会社などからコンタクトを受け取る機会をつくれます。資金調達前の企業も登録できます。

▶ StartupListに登録する(無料)
https://www.startuplist.jp/

 

 

株式会社BiPSEE

2017年7月、心療内科医の松村雅代が設立。

事業内容:VRやスマートフォンアプリを用いたデジタル療法(プログラム医療機器)の開発。うつ病患者向けVRデジタル療法の治験(検証的試験)を実施中
ミッション:こころに寄り添う、新しい医療のかたちを
採用情報:プロダクト開発・事業開発・コーポレートの各職種で採用中(詳細はコーポレートサイトへ)

スタートアップにおすすめ記事
スタートアップが使える融資制度一覧|公庫の主要11制度と3つの特例

スタートアップが使える融資制度一覧|公庫の主要11制度と3つの特例

【2026年版】はじめてのエンジェル投資|エンジェル税制と始め方

【2026年版】はじめてのエンジェル投資|エンジェル税制と始め方

株式を希薄化せずに、成長資金を確保。大学在学中に創業したCEOが明かす、はじめてのデット調達

株式を希薄化せずに、成長資金を確保。大学在学中に創業したCEOが明かす、はじめてのデット調達

会員限定 資金調達を成功させる最新ハックを独占公開
閉じる