スタートアップ経営者を悩ませる株主総会について-株主総会の面倒解決にケップルが挑む

スタートアップ経営者を悩ませる株主総会について-株主総会の面倒解決にケップルが挑む

 皆さん、こんにちは。ケップルの藤原弘之と申します。普段はケップルで総合プロデューサーとして様々な事業を創ったり、日経COMEMOでスタートアップの取材記事を書いたりしております。ぜひTwitter@fuddy)のフォローなどしてくださると嬉しいです。

さて、今回はスタートアップ経営幹部を悩ませる『株主総会』についてお話しいたします。「スタートアップの株主総会は開かれない、かつ手続きが面倒!」というお話に始まり、最後は株主総会にまつわる面倒ごとを解決する方法についてご紹介いたします。

 

1. 開催されないスタートアップの株主総会

 いきなり開催されないと書くと語弊がありますが、一般的にイメージされる上場企業が実施するような株主総会は、スタートアップの世界においてはまずありません。スタートアップの場合、株主数は多くても数十人しかいないことがほとんどで、アーリーステージであったり資金調達先が少なかったりする場合は株主数が数名という場合もあります。私もスタートアップに関わって(ベンチャーキャピタリストとしてもスタートアップの中の人としても)長いですが、株主総会が実際に開催されている場面に出会ったことは"ほぼ"ありません("ほぼ"と書いたのは1社目のスタートアップのときに一度だけ、株主総会を開催しようとして会議室などをセッティングしたものの誰も来なかった(笑)、という寂しい経験をしたことがあるためです)。

 スタートアップの株主(≒VC等の投資家)がいちいち参集しない理由は、スタートアップ経営者と株主とは常日頃から密に連絡を取り合っており、株主総会の場で初めてその議題について聞き判断を下す、ということが無いためです。普段からスタートアップ経営者は株主に日々相談に乗ってもらっており、大抵は月次など決まったペースで株主報告の場が持たれていることがほとんどです。

 会社として意思決定された重要事項については、株主総会で承認されて初めて法的に認められるものが多々あります 。しかし株主はその経緯も含めて既に知っているため、法的な形式基準を満たすためだけの株主総会に都度参集することなく、代理人(創業者・経営株主を指定する場合が多い)を立てて議決権を行使(会社法310条)するか、書面によって議決権を行使(会社法第311条)するか、電磁的方法によって議決権を行使(会社法第312条)するかのいずれかです。

 

2. なぜ株主総会が面倒なのか

 物理的に開催されないにもかかわらず、株主総会がスタートアップ経営者をここまで悩ませる理由は、その煩雑な事務処理にあります。株主総会は会社法で定められた重要な意思決定の場であり、たとえ大半の株式を保有している創業者であっても、自分だけで勝手に進めてしまうことはできず、法的に定められた様々な要件を満たしておく必要があります。これを満たしていないと、将来上場審査の際に法的不備を指摘され、最悪の場合、上場が延期になってしまう恐れがあります。また、昨今増加傾向にあるM&AによるExitにおいて、ガバナンスやコンプライアンスといった観点を重視する大企業が買い手となることがほとんどです。その際、ガバナンスが緩く法令に準拠していないスタートアップを間違って買ってしまわないよう、法務DDではこのあたりが厳しくチェックされます。

 株主総会の開催手続きについては、会社法第2編『株式会社』の第4章『機関』にある第1節『株主総会及び種類株主総会』に記載があります。条文としては会社法第295条から第325条までがこれにあたります。スタートアップ経営者にとって重要なことは、「ここに書かれていることはしっかり守られています」という証拠を常に残しておくことです。それさえ頑張ってやっておけば、上場審査やM&Aでの法務DDも怖くありません。しかし、ただでさえ忙しい会社経営の最中、そのための事務処理は非常に面倒です。これが、多くのスタートアップ経営者が株主総会の度に憂鬱になる所以です。

 それなら部下や事務員に任せてしまえばよいのでしょうか。実は、株主総会で扱う議案というのは非常にセンシティブなものが多く、一般社員や派遣社員に安易に知られては困ることが多々あります。どんなストックオプションをどれだけ発行して誰に付与するのかを決議するもの、あるいは、ある上場企業との資本業務提携を見越した株式の新規発行を決議するものなど、あまり一般社員には知られたくない情報が大半です。したがって、この作業はおいそれと人任せにすることもできません。かつ、次章から解説する招集通知の発送と委任状の回収、保管という事務処理はスタートアップ経営幹部が自分で行う必要があります。「このような事務処理が苦手でCEOになったのに、相変わらず自分しかできない事務処理がたくさんあって萎える」と嘆くスタートアップ経営者の気持ちはとてもよく分かります。

 さらに面倒なことに、これらのタスクは株主総会を開催する度に行う必要があります。急成長中のスタートアップは安定期に入った上場企業と異なり、年1回の開催が定められている定時株主総会だけでは足りず、臨時株主総会を開く機会が頻繁にあります。人員拡大に伴う引っ越しのための本店移転決議だけでなく、資金調達による新株式発行や割り当て、ストックオプションの発行と付与なども株主総会決議が必要だからです。VC等から種類株式で資金調達を行っている場合は、その種類株式に応じた種類株主総会も必要になることがあります。実は、これが結構忘れられがちです。これらを合計すると、恐らくですが、スタートアップは年間平均34回程度、何らかの株主総会を開催しているのではないでしょうか。

 

3.  スタートアップ経営幹部を悩ませる事務処理

 スタートアップが株主総会を開くためには、開催を取締役会で決議(まだ取締役会設置会社でない場合は取締役が決定)した後、株主総会の日の2週間前までに全株主に対して『株主総会の招集の通知』を発しなければなりません。また、これは電話で「来てください」と言うのではなく、ちゃんと書面で行う必要があります。理由は、会社法第299条第2項に次のようにあるためです。

会社法第299

2項 次に掲げる場合には、前項の通知は、書面でしなければならない。

一 前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合

二 株式会社が取締役会設置会社である場合


 上記の『前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合』という部分は、次の会社法第298条を見ると分かりますが、『書面による議決権の行使または電磁的方法による議決権の行使を定めた場合』という意味です。


会社法第298条第1項(抜粋)

取締役は、株主総会を招集する場合には、次に掲げる事項を定めなければならない。

1号 株主総会の日時及び場所

2号 株主総会の目的である事項があるときは、当該事項

3号 株主総会に出席しない株主が書面によって議決権を行使することができることとするときは、その旨

4号 株主総会に出席しない株主が電磁的方法によって議決権を行使することができることとするときは、その旨


 また、公開会社でない場合は招集の通知を2週間前ではなく1週間前に短縮可能なのですが、以下の通り書面による議決権の行使または電磁的方法による議決権の行使を定めた場合は短縮できません。


会社法第299条第1

株主総会を招集するには、取締役は、株主総会の日の2週間(前条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、1週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))前までに、株主に対してその通知を発しなければならない。


 実は、全株主の同意を得ることでこの招集手続きを省略してしまうことも可能な場合がありますが、やはり書面による議決権の行使または電磁的方法による議決権の行使を定めた場合には次の通り省略できません。


会社法第300

前条の規定にかかわらず、株主総会は、株主の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。ただし、298条第1項第3号又は第4号に掲げる事項を定めた場合は、この限りでない。


 開催予定の株主総会の定めに応じて通知期日が変わってしまうため、スタートアップ経営者は必ず顧問弁護士の先生に相談する必要があります。また、招集を通知する書面の内容についても、株主総会で扱う議案に応じて、必ず書かなければならない事項が発生することがあり、この点も前回の招集通知を単にコピーするのは危険です。面倒ですが、やはり毎回専門家に確認するのが安全です。以下は招集通知の一つの例です。



 また、委任状については次のようなものが一般的です。



  スタートアップ経営者は、これらの書類を準備し、郵送し、委任状を回収し、保管するという一連の流れを株主総会の度に毎回実施することになります(しかも相手は株主ですから、みすぼらしい封筒で送るわけにはいかず、ちゃんとした送付状をしたため、返信用のレターパックを同封して、という作業をされる方が多いかと思います)。また、株主ごとに回答状況を管理し、場合によっては催促をし、必要書類を一式揃えるまで気は抜けません。これら事務処理が、スタートアップ経営者を悩ませる理由です。

 ※なお、重ねての記載になりますが、これらの書面は一つの例に過ぎません。危険ですのでこれをそのまま利用したりせず、いつもお世話になっている顧問弁護士の先生に必ずご確認ください。


 4. 事前承諾事項等にも注意

 会社法上、「株主総会で株主の同意を得て初めて重要な意思決定が承認される」とは言っても、スタートアップの場合は創業者(経営株主)が株式の大半を保有していることが大半です。特別決議が必要な67%以上を保有していることも珍しくないので、極端なことを言えば、創業者(経営株主)が賛成し他の株主を無視してしまえば議案が通ってしまいます。そういった暴走を防ぐ意図でVC等から出資を受ける際に締結する投資契約書において、重要な意思決定については事前承諾事項、事前協議事項、事前通知事項(いずれも重い順)が定められることが一般的です。簡単に言うと、「重要なことを決める前に僕らに教えてくださいね」ということです。投資契約上の事前協議事項の定めは例えば以下のようなものです。

第○条(事前協議事項)

乙は、以下の各号記載の事項につき、法令、定款その他の社内規程に基づき決定又は承認を行う場合は、その意思決定の15日前までに、甲に対して、当該決定又は承認予定事項の内容を書面により通知のうえ甲と誠実に協議しなければならない。

(1) 甲から出資を受けた資金使途の変更

(2) 事業計画の実現に変更を生じる可能性のある重大な事項

・・・

 スタートアップ経営者は、このような投資契約もちゃんと守って運用しているという証拠もしっかり残しつつ、株主総会の招集通知の作成に臨む必要があります。 


5. 実は同様に投資家も何とかしたいと思っている

 スタートアップだけでなく、投資家もこの事務処理を何とかしたいと思っています。投資家側も招集通知を受け取り、委任状に署名捺印し、送り返す、というタスクが毎回発生するためです。投資家が大企業であれば、押印稟議の社内フローに乗せる必要があり時間もかかります。弊社ケップルには『FUNDBOARD』というファンド管理業務のDXを支援するSaaSがあり、そのヘビーユーザーであるインキュベイトファンドさんの例を挙げると、彼らの投資先は2010年の1号ファンド設立以来累計で525社を超えています。単純に計算すると、年間で1,000通以上の招集通知を受け取る可能性があり、この事務処理は想像するだけでも地獄絵図です。

 また、インキュベイトファンドさんに限らず、一般的に招集通知は紙やPDFで送られてくることがほとんどなので、どのスタートアップがいつどんな議案で招集通知を送ってきているのか、投資家としていつどの議案にどの賛否を投票したのかをシステムで一元管理することも非常に困難だったりします。過去の履歴を閲覧しようと思ったら、紙のキングファイルと格闘するか、ファイルサーバーにあるPDFデータを必死で検索するしかありません。


6. 株主総会を効率化しガバナンスも強化するソリューション

 ここまで、株主総会がスタートアップにとっていかに厄介なものかを述べてきましたが、これらのペインを解消できる一つの提案として、弊社のサービス『株主総会クラウド』を紹介させていただきます。

 株主総会クラウドは、スタートアップが直面する招集通知の発送、委任状の回収、議案に対する回答状況の管理と保管を全てクラウドで完結させる目的で開発されました。スタートアップは、法的要件を満たした招集通知だけを電子データで用意していただければOKです。株主への通知もシステム上の管理画面から実施できますし、投資家もクラウド上で委任状による議決権の行使が可能ですから、スタートアップと投資家双方が紙と印鑑による事務処理から解放されます。もちろん、忘れられがちな種類株主総会にも標準で対応しています。また、過去の株主総会の履歴についても検索や閲覧が容易になりますし、もしスタートアップがM&Aで法務DDを受けられる際には、株主総会クラウドの弁護士用アカウントを先方にお伝えしていただければそれで事足ります。


 また、株主総会クラウドは単に株主総会を効率化するだけには留まらず、ガバナンスの強化にも貢献できると思っています。これまで述べたように、株主総会は未上場企業においてもかなり面倒であるが故に、できれば適当に(緩いガバナンスのまま)済ませたいという負のインセンティブがどうしても働きます。スタートアップであれば将来の上場やM&Aを見据えているので、しっかりと正しく取り組んでいこうとするインセンティブがまだありますが、特に上場などのExitを視野に入れていない中小零細企業においては、ガバナンスを意識した株主総会をちゃんと開催していないケースもあります。しかし、昨今は後継者不足による事業承継問題の文脈でM&Aが語られることも増えてきており、上場を視野に入れていない中小零細企業にとっても、買い手企業による法務DDに耐えられる程度のガバナンスは必要になります。株主総会クラウドを使っていれば自動的にその部分は満たされるように作っていますから、実は全ての未上場企業に勧められるプロダクトになっていると思います。



7. 最後に

 スタートアップが急成長する際に株主総会は避けて通れません。現行のスタートアップ、投資家双方のペインを解消して、スタートアップ経営者が事業に専念できるようこれからもサービス開発に取り組んでいこうと思っていますので、ぜひ、下記リンクから『株主総会クラウド』を試していただけると嬉しく思います。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 リンク → https://kabunushi-soukai.cloud/

 

(補足)

 この度、このような機能を弊社ケップルが懇意にさせていただいているVCCVCなどのスタートアップ投資家の方々にお伝えしたところ、皆さん本当にこれまでの事務処理が大変だったようで(笑)、このサービスをぜひもっと広めたいと言ってくださる方がほとんどでした。こちら( https://kabunushi-soukai.cloud/partner/ )に株主総会クラウドのサポーターとして名乗りを上げてくださった方々を掲載しておりますが、名だたるVCCVCだけでなく、DDを実施する立場にある士業の方々までが賛同くださいました。皆さん、やはりここにペインを感じていらっしゃったようです。