【2026年版】ダイリューションとは?計算式・増資の希薄化対策

【2026年版】ダイリューションとは?計算式・増資の希薄化対策

資金調達
2026.01.16

スタートアップや成長企業の資金調達において、最も注意すべきリスクの一つが「ダイリューション(Dilution)」です。

 

2026年現在、政府の支援策拡充により資金調達の選択肢は多様化しましたが、安易な増資によって創業者が経営権を失うケースは依然として発生しています。私もベンチャーキャピタリストとして、さまざまに起業家をみてきました。株式の資金調達をする上で、ダイリューションの考えを知ることは非常に大事です。

 

増資は事業を加速させる強力なエンジンですが、同時に「自社の切り売り」でもあります。

 

本記事では、ダイリューションの基礎知識から具体的な計算式、そして2026年のトレンドを踏まえた希薄化を防ぐための対策を解説します。

 

 

 


ダイリューション(希薄化)とは?

ダイリューション(Dilution)とは、直訳すると「薄まること」を意味し、ファイナンス用語としては「発行済株式数が増加することで、1株あたりの価値や持株比率が低下すること(株式の希薄化)」を指します。

 

主に、第三者割当増資やストックオプション(新株予約権)の行使によって発生します。

 

増資で「何が」薄まるのか?

投資家から資金を集める(増資する)と、会社の資本金(現金)は増えます。しかし、既存株主にとっては以下の2点が「希薄化」します。

 

  1. 議決権の希薄化(経営権の低下)

  2.  

    • 創業者が持っている株式の割合(%)が下がり、会社の意思決定に対する影響力が弱まります。

    •  
  3. 経済的価値の希薄化(1株あたり価値の低下)

    • 株式数が増えるため、理論上の「1株あたりの純利益(EPS)」が低下します。

    •  

わかりやすいイメージ

会社を「1枚のピザ」に例えると分かりやすくなります。

  •  
  • 増資前: あなたはピザ全体(100%)を持っています。

  •  
  • 増資後: 投資家にお金を出してもらう代わりに、ピザを一回り大きくし、その一部(20%など)を切り分けて渡します。

  •  
  • 結果: ピザ全体(会社規模)は大きくなりましたが、「あなたが食べられる割合」は100%から80%に減りました。

 

これがダイリューションです。

 

 

ダイリューションの計算方法

「今回の資金調達で、自分の持株比率はどう変わるのか?」

これを把握するためには、以下の計算式を用います。

 

持株比率の計算式

 
 

具体的な計算シミュレーション

例えば、あなたが発行済株式1,000株(100%保有)を持つ経営者だとします。

 

ベンチャーキャピタル(VC)に対して、新たに250株を発行して資金調達を行う場合:

  1. 増資後の総株式数

  2.  
  3. あなたの持株比率

  4.  

     
  5. ダイリューション(希薄化率)

    持株比率が100%から80%になったため、20%の希薄化が発生しました。

  6.  

投資実務での計算(バリュエーション)

実際の交渉では、株数ではなく「企業評価額(バリュエーション)」をベースに計算します。

 

  • ・Pre-money Valuation(調達前評価額): 4億円

  • ・調達額: 1億円

  • ・Post-money Valuation(調達後評価額): 5億円

  •  

この場合、投資家に渡す比率(希薄化分)は以下の通りです。

 

ダイリューションが招くリスクと問題点

ダイリューション自体は成長のために必要なプロセスですが、「過度な希薄化」は深刻な問題を引き起こします。

 

1. 経営権(コントロール)の喪失

シリーズA、シリーズBと調達を重ねるごとに、創業者の持株比率は必ず低下します。以下のラインを割ると、経営に支障が出始めます。

持株比率 経営への影響
50%超 経営権あり。 取締役の選解任など、通常の決定を単独で行える。
33.4%超 拒否権あり。 合併や定款変更などの重要事項(特別決議)を単独で阻止できる。
33.4%未満 拒否権なし。 他の株主に結託されると、社長解任や会社売却を阻止できなくなる可能性がある。

 

2. インセンティブの低下

創業者や初期メンバーの持分が減りすぎると、「上場(IPO)やM&Aで成功しても、得られるリターンが少ない」という状況になり、事業へのモチベーションが下がるリスクがあります。

 

 

【2026年トレンド】増資の希薄化を防ぐ対策

2026年の資金調達環境において、賢い経営者はどのようにダイリューションをコントロールしているのでしょうか。主な対策を紹介します。

 

1. デットファイナンス・ベンチャーデットの活用

銀行融資などの「デット(負債)」は、株式を発行しないためダイリューションが起きません。近年、日本のスタートアップ界隈でも「ベンチャーデット」(新株予約権付融資など)が一般化しました。株式による調達と組み合わせることで、希薄化を最小限に抑えつつ、必要な資金(ランウェイ)を確保できます。

 

2. 種類株(優先株)の発行

「議決権のない優先株」を発行する方法です。投資家には「配当や残余財産の優先権」という経済的メリットを与える代わりに、議決権を持たせない(または制限する)ことで、経営者の議決権比率を維持します。これはVC投資のスタンダードになっています。

 

3. 高いバリュエーションでの調達

企業価値(株価)を高く評価してもらえれば、少ない株式放出で多額の資金を調達できます。ただし、実力以上の高値をつけると、次回の調達で株価が下がる「ダウンラウンド」のリスクが高まるため、市場環境に合わせた適正価格を見極める必要があります。

 

4. 資本政策(Capital Policy)の綿密な設計

「いつ、誰から、いくら調達し、何%放出するか」を創業初期からIPOまでシミュレーションすることを資本政策と呼びます。一度手放した株式を買い戻すことは極めて困難です。後戻りできないからこそ、初期段階での計画がすべてを左右します。

 

 

まとめ

ダイリューションとは、資金調達の代償として「持株比率」や「1株の価値」が低下することです。スタートアップにとって増資は不可欠ですが、それは経営権の一部を投資家に渡す行為でもあります。

 

2026年は、単なる増資だけでなく、デットファイナンスや種類株などを組み合わせた「高度な資本政策」が求められる時代です。自社の成長スピードと、守るべき経営権のバランスを見極め、最適な資金調達を行いましょう。

 


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監修者情報

前川 英麿 さん
プロトスター株式会社 代表取締役CEO
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)に入社し、ベンチャーキャピタルに従事。その後、常駐のターンアラウンド支援に特化したフロンティア・ターンアラウンド株式会社を経て、2015年スローガン株式会社に参画。投資事業責任者としてSlogan COENT LLPを設立し、執行役員カンパニープレジデント就任。2016年11月に挑戦者支援インフラを創るべくプロトスター株式会社を創業。

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