スタートアップ企業の成長フェーズにおいて重要なシリーズBラウンドとは、どのような段階を指すのでしょうか。
今回はシリーズBラウンドの特徴や調達額の目安、さらに評価ポイントや資金調達を受けられない場合も紹介します。
シリーズBラウンドとは?
シリーズBの特徴
シリーズBの特徴としては、更に成長するための人材採用やプロモーション、さらに製品やサービスの追加開発のための投資を行うフェーズに当たります。
そのため、シリーズAでPMF(プロダクト・マーケット・プロフィット/製品・サービスが市場で受け入れられ始めた段階)を構築していることが前提です。
飛躍的な成長を果たすべく、特に採用活動や新たに入社したメンバーの追加人件費、さらには新たなオフィスの確保も必要になってくるでしょう。
そして企業成長に耐えうるシステム構築や内部管理体制、業務フローなどの仕組みづくりも不可欠です。
それらの投資に耐えうる将来的なランウェイを見越しながら、成長を果たしていかなければならない重要なフェーズとも言えます。
関連記事:シリーズAとは?資金調達における特徴や調達先、投資ラウンドを紹介
シリーズBにおける資金調達の相場
資金調達の相場として、事業によっては50億円規模になる事もありますが、数億円〜30億円程になることが多いでしょう。
シリーズBのタイミングではPMFが確立しているものの、まだ製品・サービスの浸透はこれからの段階で、資金はできれば多めに確保したいところです。
しかしながら、この段階でのバリュエーションは数十億程であり、調達が多いと希薄化の問題が発生します。
希薄化が発生すれば、創業者を中心とした経営の柔軟性が損なわれるでしょう。
そのため、企業価値に対する調達金額という観点でも、数億円〜30億円程に落ち着くものと考えられます。
シリーズBの資金調達にかかる期間
このフェーズにおける調達期間は、半年〜1年程を見ておく必要がありますが、さらにエクステンションラウンドを含めると数か月程延長することもあります。
また、金額的にもリード投資家の存在が不可欠であるため、まずはそこからの出資を引き出すことが重要です。
ただし、PMF後のトラクション(実績や実績となりそうな兆候)次第では、投資家が良い兆しが出るまで様子見することも想定されます。
そして、プレバリュエーション次第では、投資家との折り合いがつかないことも想定しておかなければなりません。
さらに、CVCや銀行系VCなどフォロー投資家の出資意向はあるものの、リード投資家がいないと出資をしないケースも考えられます。
CEOやCFOにとって、1年程度拘束されるのはほかの業務が止まってしまい厳しいですが、それだけシリーズBの調達は重要であるということです。
関連記事:リードインベスターとは何か?役割や求められることは?
シリーズBで資金調達を受けるための評価ポイント
投資家が期待するトラクションが出ていること
まず、投資家が期待するトラクションが出ている、もしくは出始めていることが必要です。
この段階ではまだ殆どのスタートアップにおいて赤字が継続している段階のため、赤字か黒字かは余り関係ありません。
投資家が見るトラクションとして、企業が設定している重要KPIの進捗状況や、前年度売上の伸び率などが挙げられます。
競合他社にない強みがあること
続いて、シリーズA迄の段階で、競合他社にない、自社ならではの強みが構築できている状態になっているかが挙げられます。
魅力的な事業を構築したうえで、他社からの参入障壁が高ければ、それだけ成長も期待できるでしょう。
市場成長が期待できること
さらに、事業が対象とする市場の成長が期待できるかどうかも重要な論点です。
TAM(Total Addressable Market/事業が獲得できる可能性の全体市場規模)、SAM(Serviceable Available Market/事業が獲得できうる最大市場規模)、SOM(Serviceable Obtainable Market/事業がアプローチできる市場規模)のそれぞれにおける客観的な市場規模とともに、自社がリーチできる確度とその蓋然性も求められるでしょう。
シリーズBの調達方法
VCを中心としたリード投資家からの調達
まず、検討していく必要があるのが、前述でも少し触れましたがリード投資家を固めていくことです。
シリーズBにおける数億〜30億規模を調達する場合、最低でも数億〜10億程を出資してくれるリード投資家を固めることは必須となります。
リード投資家は、資金の出し手という側面だけではなく、経営面でのアドバイザーや壁打ち相手としても力強い存在とも言えるでしょう。
逆に、取締役派遣など経営面で入ってくることもあるため、経営の自由度が失われる可能性があります。
スタートアップがともに成長していくためには必要不可欠な存在であるため、シリーズA時点での追加投資という面も含めて検討していく必要があります。
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CVCや銀行系VCなどフォロー投資家からの調達
続いて、フォロー投資家層もしっかり固めていく必要があります。
目標調達額を集めるためには、複数のフォロー投資家に入って貰うことが必要不可欠でしょう。
CVCであれば、自社事業との連携強化が見込めるうえ、銀行系VCであれば事業提携先紹介も見込めます。
とりわけ地銀系VCであれば、中々目が届かない地方圏への販路や認知度拡大に寄与してくれることでしょう。
反面、出資サイズが数千万前半〜1億円と小さいことや、意思決定までに時間を要する可能性があります。
ただし、CVCの場合、お互いの事業シナジー次第では数億円規模の出資を行うこともありますが、リード投資家となることは少ないようです。
関連記事:CVCとは?VCとの違いや投資を受けるメリットをわかりやすく解説
政府系金融機関からの制度融資や信用保証協会保証付き融資の活用
赤字続きのスタートアップが、プロパー融資を利用するのは難しいでしょう。
そのため、日本政策金融公庫や、商工組合中央金庫(商工中金)による制度融資の活用が一般的です。
審査においては、VCによる投資判断同様に、企業の成長性や市場性などを見られることとなります。
そして、場合によっては、投資家からの出資を前提とした融資となり、出資後の融資となることも考えられるでしょう。
信用保証協会融資は、メインバンクを通じて行うことができます。
しかしながら、信用保証枠により、調達できる額の限度があります。
また、メインバンクを通じて保証協会の審査が同様に行われるため、対策を講じていく必要があるでしょう。
投資家からの調達や融資のどちらの場合においても、着金までが資金調達であることを忘れないで、最後まで気を引き締めて臨むことが求められます。
シリーズBで資金調達を受けられない企業の特徴
トラクションが思うように伸びていない
シリーズB調達を実施するにあたり、シリーズA時点と比べて成長性が見られない場合には調達が難しいという判断になります。
企業側の考え方と違って、投資家サイドではそれ以上のトラクションを求める場合もあるかもしれません。
その場合には、しばらく様子を見させて欲しいということで、先延ばしになる可能性も大いにあるでしょう。
予算対比で実績の下振れが大きい
シリーズBを行う事業年度予算に対する、実績の進捗状況を細かく確認されることとなります。
直近の月次の実績を含め、直近の売上が見込める営業パイプラインや商談状況など、今後の見込数値の蓋然性も見られるでしょう。
シリーズBにおいては実績が着実にあがってきていることが非常に大切で、足元実績の確からしさを持って、投資判断を行うこととなります。
また、トラクションや予実進捗の双方において、投資家側の担当者が是非投資したいという気持ちがあっても、投資委員会などで跳ねられる可能性も十分あります。
担当者の気持ちが前向きであっても、投資委員会次第で大きく判断が変わることも頭に入れておくべきでしょう。
シリーズBにおける資金調達事例
oVice
バーチャルオフィスやバーチャルイベント会場を運営する同社は、シリーズBラウンドで新規投資家および既存投資家、さらには金融機関からの融資で45億円調達しています。
シリーズB調達45億円のうち、既存と新規投資家による第三者割当増資で40億円、融資で5億円調達しています。
調達資金は、プロダクト強化と、海外展開や人材採用強化、マーケティング活動に使われる予定です。
公式HP:https://ovice.in/
paiza
ITエンジニア向け国内最大の転職・就職・学習プラットフォーム「paiza(パイザ)」を運営する同社は、新規投資家と経営陣から7.1億円を調達しています。
調達資金は、サービス基盤をより強固にしていくことや、さらなる事業領域拡大に向けた取り組みに使われる予定です。
公式HP:https://paiza.jp/
Gaudiy
シリーズBのファーストクローズでVC、CVCから25億円、セカンドクローズで9億円の総額34億円を調達しています。
ブロックチェーン技術を活用したファンプラットフォーム「Gaudiy Fanlink」を運営する同社ですが、調達資金は人材採用の強化と、グローバル展開への取り組みに使われる予定です。
公式HP:https://gaudiy.com/
シリーズBで受けられる補助金・助成金
ものづくり補助金
経営革新に投資するための補助金として、最大1,250万円まで補助するもので、中小企業庁が管轄です。
環境に配慮した製品・サービス開発であるグリーン枠での申請は最大2,000万円まで、さらにグローバル展開を行う企業では3,000万円までとなっています。
申請から補助金受給まで、半年から1年程度を要するものでありますが、要件にクリアすれば受給できるものです。
また毎年継続的な報告は必要となりますが、資金調達や借入が難しい場合には、効果的な調達手段と言っていいでしょう。
事業再構築補助金
ポストコロナ・ウィズコロナ時代の社会変化に思い切った事業再構築を支援する補助金です。
従業員数にもよりますが、ものづくり補助金よりも大きく、グリーン成長枠による補助対象額は最大1.5億円規模になります。
ただしこちらの補助金は、コロナ後の売上高がコロナ前の売上高よりも減少している必要があります。
そのため、スタートアップにとっては、ピポットにより既存事業を再検討する際に有効かもしれません。
まとめ
シリーズBラウンドにおける資金調達の特徴として、調達額や期間、目安、評価のポイント、そして調達できない場合など、多面的に確認しました。
シリーズBラウンドは、トラクションや予実進捗が順調に進捗していない場合は、タフな調達活動となります。
着実な事業成長やトラクションで成果を出すためには、事業における優先順位付けがCEOには求められてくることとなるでしょう。
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画像出典元:ODAN