【図解】VC・CVC・エンジェル投資家の違い|あなたのスタートアップは誰から調達すべき?

【図解】VC・CVC・エンジェル投資家の違い|あなたのスタートアップは誰から調達すべき?

0025.11.21

 

「資金調達をしたいけれど、VCとCVC、エンジェル投資家、結局誰に声をかければいいの?」

「お金が出ればどこでも同じでしょ?」

もしあなたがそう考えているなら、少し危険かもしれません。

投資家にはそれぞれ「出資する目的」があり、求めているリターンが全く異なります。ここを間違えると、「話が噛み合わない」だけでなく、調達後の経営方針で揉める原因にもなりかねません。

 

この記事では、元VCとしての経験と、国内最大級のマッチングプラットフォーム「StartupList」の実績を基に、各プレイヤー(VC・CVC・エンジェル)の決定的な違いと使い分けを解説します。

 

【まずは全体像を知りたい方へ】

資金調達の基本やVCの仕組み自体を詳しく知りたい方は、以下のメイン記事を先にご覧ください。

VC(ベンチャーキャピタル)とは?元VCが教える「仕組み」と「資金調達」の全知識


1. 【比較表】VC・CVC・エンジェル投資家の違い一覧

まずは結論から。それぞれの特徴を比較表にまとめました。最も大きな違いは「なぜお金を出すのか(出資目的)」です。

比較項目 VC(ベンチャーキャピタル) CVC(コーポレートVC) エンジェル投資家
主な出資者 機関投資家・金融機関など 事業会社(親会社) 個人(起業家OBなど)
出資の目的 リターン(金銭的利益) 事業シナジー(協業) 応援・恩返し・リターン
投資金額 数千万〜数十億円 数千万〜数億円 数百万〜数千万円
決定スピード 中(1〜3ヶ月) 遅め(親会社の承認が必要) 早い(即決も)
ハンズオン 経営・財務・採用支援 アセット提供・販路紹介 メンタリング・人脈紹介
主なステージ プレシリーズA以降 シリーズA以降 シード(創業期)

ざっくりとした使い分けのイメージ

  • エンジェル投資家: 創業直後で実績がなく、まずはプロダクトを作りたいとき。
  • VC(独立系・金融系): PMF(製品が市場に適合)し、上場に向けて急拡大したいとき。
  • CVC: 特定の事業会社と提携して、技術や販路を活用したいとき。
  •  

2. VC(ベンチャーキャピタル):上場請負人

一般的に「VC」と呼ばれるのがこれです。事業会社を母体としない独立系VCや、銀行・証券会社を母体とする金融系VCが該当します。

特徴:利益(キャピタルゲイン)が最優先

彼らのミッションはシンプルです。「安く買って、高く売る(IPO/M&A)」。

LP(出資者)から預かったお金を増やして返す義務があるため、シビアに「成長性」と「Exit(出口)の確度」を見ます。

 

  • メリット: 巨額の資金調達が可能。上場に向けたプロの経営指導(ハンズオン)が受けられる。
  • 注意点: 成長スピードへのプレッシャーが強い。

【まろコメント】

VCは「経営のプロ」です。時には耳の痛いことも言いますが、それは「会社を勝たせるため」です。彼らを単なる金づるではなく、戦略パートナーとして使い倒せる起業家が成功します。


3. CVC(コーポレート・ベンチャーキャピタル):事業シナジー重視

CVCとは、「事業会社(メーカー、通信、IT大手など)が自社の戦略のために運営するVCファンド」のことです。

 

特徴:本業との「シナジー」が必須

一般的なVCとの最大の違いは、金銭的なリターンだけでなく「親会社の本業にプラスになるか(事業シナジー)」を重視する点です。

  • 「うちの販売網を使えば、御社の製品をもっと売れるよね」
  • 「御社の技術があれば、うちのDXが進むよね」

こうした協業が見込める場合、財務状況が多少悪くても投資が決まることがあります。

 

  • メリット: 大企業の看板(信用)、販路、設備などが使える。
  • 注意点: 意思決定に時間がかかる(親会社の稟議が必要)。競合他社と組みにくくなるリスクがある。
  •  

4. 【実録】StartupListで生まれたCVC協業事例:タイミー×セブン銀行

「CVCからの調達=事業シナジー」と言われても、具体的にどういうことかイメージしづらいかもしれません。

ここで、実際にStartupListを通じてCVCとの出会い、事業を加速させた「株式会社タイミー」と「セブン銀行」の事例を紹介します。

 

出会いからわずか3ヶ月で提携へ

スキマバイトアプリ「タイミー」の小川代表は、StartupListを通じてセブン銀行(のCVC部門)にアプローチしました。

 

タイミーのビジネスモデルにとって、「働いた報酬がすぐに手に入る」体験は非常に重要です。そこでセブン銀行側は、単にお金を出すだけでなく、セブン銀行の「リアルタイム振込機能」などのインフラを提供することを提案しました。

 

  • 出会い: StartupListでのコンタクト(およびリアルな場での偶然の再会)
  • スピード: 出会いからわずか3ヶ月後の2019年6月に業務提携
  • 成果: 24時間365日、いつでも報酬が受け取れる仕組みが完成し、タイミーのユーザー体験が劇的に向上。
  •  

量は質に転化する。セブン銀行が挑むVUCAな時代のイノベーション戦略(起業ログ

 

CVCだからこそ実現できたスピード成長

もしこれが「一般的なVC」であれば、資金は得られても、銀行ATMや決済インフラそのものは提供できませんでした。

  • 「自社の課題を解決してくれるアセット(資産)を持っている大企業はどこか?」という視点でCVCを探せるのが、StartupListの強みです。
  •  

【まろコメント】

実はこの事例、StartupList経由の連絡と、リアルな飲み会での遭遇が同時期に重なった「奇跡のタイミング」でもありました。でも、動かなければ奇跡は起きません。StartupListには、こうした「事業提携」に意欲的なCVCが多数登録しています。


5. エンジェル投資家:スピードと熱意の応援団

エンジェル投資家は、組織ではなく「個人」でお金を出してくれる富裕層や起業家OBです。

 

特徴:創業期の「最初の一歩」を支える

まだ海のものとも山のものともつかない創業期(シード期)に、「君の熱意にお金を出そう」と言ってくれる貴重な存在です。

自分のお財布から出すため、意思決定は超高速。面談したその場で「出資するよ」と言われることも珍しくありません。

 

  • メリット: 審査が早い。経営への干渉が比較的少ない。起業の先輩としてのアドバイスがもらえる。
  • 注意点: 調達できる金額が小さい。契約書周りのトラブルに注意。

あわせて読みたい:【2025年最新版】エンジェル投資家とのマッチングサービス5選!


6. SLピッチの現場には「VC・CVC」が集結しています

私は毎月VCとCVCが集う「SLピッチ」を主催しています。

SLピッチの審査の様子。VCとCVCの担当者が並んで、真剣に事業プランを審査していますSLピッチの審査の様子。VCとCVCの担当者が並んで、真剣に事業プランを審査しています

 

このように、リアルのピッチイベントやStartupListには、VC(独立系・金融系)とCVCが混在しています。彼らは敵対しているわけではなく、役割分担をしています。

 

  1. VCがリード投資家として、会社のガバナンスや上場準備を整える。
  2. CVCがフォロワー投資家として参加し、事業提携で売上を爆発させる。
  3.  

このように、両方のプレイヤーをうまく巻き込む(協調投資してもらう)ことが、シリーズA以降の成功の鍵です。


まとめ:フェーズと目的に合わせて使い分けよう

「誰から調達すべきか」の答えは、あなたの会社の「現在のフェーズ」と「今後どうなりたいか」によって変わります。

 

とにかく早く、最初の資金が欲しい → エンジェル投資家

上場を目指して、急成長したい → VC(ベンチャーキャピタル)

大手のアセットを使って、事業を拡大したい → CVC

  • StartupListでは、国内の主要なVC・CVCを網羅しており、それぞれの特徴から検索することができます。まずは自社のフェーズに合った投資家がどれくらいいるのか、リストを見てみましょう。

 

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監修者情報

2008年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)に入社し、ベンチャーキャピタルに従事。その後、常駐のターンアラウンド支援に特化したフロンティア・ターンアラウンド株式会社を経て、2015年スローガン株式会社に参画。投資事業責任者としてSlogan COENT LLPを設立し、執行役員カンパニープレジデント就任。2016年11月に挑戦者支援インフラを創るべくプロトスター株式会社を創業。
 
他にサイトビジット社外監査役、経済産業省 先進的IoTプロジェクト選考会議 審査委員・支援機関代表等を歴任。ホロラボ社外監査役、東京都 政策目的随意契約認定審査会 外部審査委員、青山学院大学「アントレプレナーシップ概論」非常勤教師、グローバルビジネス研究所プロジェクト研究員。早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター招聘研究員等。日本ベンチャー学会所属。著『起業の壁 ―安易な起業はおススメしません

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