シード・シリーズAの「VC投資額」相場は?投資ラウンドごとの定義と必要なKPI

シード・シリーズAの「VC投資額」相場は?投資ラウンドごとの定義と必要なKPI

0025.11.21
この記事の監修・執筆:前川 英麿(プロトスター株式会社 代表 / 元VC)
早稲田大卒業後、エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)等でVC投資活動に従事。現在はプロトスター株式会社代表取締役として、起業家支援インフラ「StartupList」を運営し、115回以上続くリアルイベント「SLピッチ」を主催。現場の視点でVCのリアルを解説します。

 

「シードで3,000万円調達したいが、高望みだろうか?」

「シリーズAに進むために、売上はいくら必要なのか?」

 

スタートアップの資金調達には、成長段階に応じた「型(ラウンド)」と「相場」が存在します。

ここを無視して、シード期のVCに「10億円ください」と言っても、会話は成立しません。

 

しかし、この「相場」は生き物のように変化します。特にここ数年、シード期の調達額は大型化しており、一昔前の常識が通用しなくなっています。

 

この記事では、元VCである私が、最新の市場環境を踏まえた投資ラウンドごとの「調達金額の目安」と、次のステージに進むためにクリアすべき「KPI(実績)の壁」について解説します。

 

【まずは全体像を知りたい方へ】

VCの仕組みや、資金調達全体の流れを知りたい方は、以下のメイン記事を先にご覧ください。

VC(ベンチャーキャピタル)とは?元VCが教える「仕組み」と「資金調達」の全知識


1. 【一覧表】投資ラウンドの定義と金額相場

まずは全体像を把握しましょう。一般的に、スタートアップの資金調達は以下のような階段を登っていきます。

ラウンド 企業のフェーズ 調達額の相場(目安) 主な資金調達先
プレシード 創業前〜直後
アイデア段階、試作品開発
数百万〜1,000万円

創業者資金、親族、

エンジェル投資家

シード 立ち上げ期
β版リリース、仮説検証
1,000万〜8,000万円

エンジェル、独立系VC、

政府系金融公庫

シリーズA 成長初期
PMF達成、本格的な顧客獲得
1億〜5億円

VC(独立系・金融系)、

CVC

シリーズB 拡大期
黒字化またはシェア急拡大
5億〜20億円 VC、CVC
シリーズC以降 完成期
IPO準備、M&A、海外展開
数十億円〜

大手VC、PEファンド、

海外機関投資家

シリーズC以降 完成期
IPO準備、M&A、海外展開
数十億円〜

大手VC、PEファンド、

海外機関投資家

※金額はあくまで目安です。SaaSかDeepTech(研究開発型)かによっても桁が変わります。

StartupListを利用する多くの起業家は、この中の「プレシード〜シリーズA」を目指しています。

あわせて読みたい:投資ラウンドとは?専門家が教えるスタートアップの資金調達と注意点


2. シードラウンド(Seed):仮説検証の戦い

シード(種)という名前の通り、事業の種を撒き、芽が出るかを確認するフェーズです。

  • 目的: MVP(実用最小限の製品)を作り、市場に受け入れられるか(PMFの兆し)を確認すること。
  • VCが見ているポイント: 「チームの魅力(誰がやるか)」と「市場の大きさ(夢)」。
  • この時期の壁: 実績がないため、銀行融資や大手VCの審査は通りにくい。
  • シード期は「実績」ではなく「夢(ストーリー)」で資金を集めるステージです。

「まだ売上ゼロだから…」と臆する必要はありません。そのための「シードマネー」です。

[あわせて読みたい:シードラウンドとは?資金調達手法や特徴を解説](※既存記事)

 


3. シリーズAラウンド:PMFとトラクションの戦い

ここからが本番です。多くのスタートアップにとって最初の大きな試練となります。

  • 目的: PMF(Product Market Fit)を完了させ、マーケティングに投資して顧客を一気に増やすこと。
  • VCが見ているポイント: 「トラクション(実績数値)」と「ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性)」。
  • この時期の壁: 夢だけでは語れなくなる。「で、数字はどうなの?」と厳しく問われる。
  •  
  • あわせて読みたい:シリーズAとは?資金調達における特徴や調達先を紹介

 


4. 【まろコメント】なぜ多くの起業家が「シリーズAの壁」で脱落するのか?

シードでの調達はうまくいったのに、シリーズAで資金が尽きて倒産してしまう。これを「シリーズAの壁」と呼びます。

なぜここで躓くのか? 私が多くの相談を受けてきて感じる理由は一つです。

 

  • 評価基準が『定性(アート)』から『定量(サイエンス)』に切り替わることに気づいていないからです。
  •  
  •  
  • シードの評価:
    • 「創業者の熱量がすごい」「アイデアが面白い」「世の中を変えそうだ」
    • 「期待値」で投資される。
    •  
    •  
  • シリーズAの評価:
    • 「CAC(獲得コスト)が1万円で、LTV(生涯価値)が5万円だから、1億円広告を踏めば5億円になる」
    • 「再現性(計算式)」で投資される。
    •  
    •  

シードVCは「応援」で出資してくれますが、シリーズA以降のVCは「投資マシーン」として、再現性のある計算式を求めます。

このモードチェンジができず、いつまでも「ビジョン」だけを語っている起業家は、シリーズAのVCから「良い人だけど、投資はできない(計算が立たない)」と判断されてしまうのです。

 


5. StartupListは「シード・アーリー」が主戦場です

「VCに会うには、まだ早すぎるかもしれない…」

もしそう思っているなら、それは誤解です。

実は、StartupListに登録している投資家の約7割以上が、「シード〜アーリー(シリーズA未満)」の企業を探している投資家です。

つまり、StartupListは「実績が出ている企業」のための場所ではなく、「これから実績を作る企業(あなた)」のための場所なのです。

 

  • 大手VCは敷居が高い?
    • StartupListには、シード期に特化した独立系VCやエンジェル投資家が多数います。
    •  
  • 実績がないとダメ?
    • 「アイデア段階(プレシード)」でも投資検討する投資家も登録しています。
    •  

「まだ早い」と遠慮する必要はありません。ここがあなたの主戦場です。まずは登録して、シード期の資金調達に成功した先輩たちの後に続きましょう。

 


まとめ:自分の「現在地」を知り、適切な相手と話そう

資金調達で最も無駄な時間は、「ステージが合わない投資家と商談すること」です。

数千万円を投資したいシードVCに「10億円ください」と言っても無理ですし、数十億円を運用するレイターVCに「アイデアを聞いてください」と言っても相手にされません。

まずは自社がどのラウンドにいて、相場はいくらで、どんな実績(KPI)が求められているのかを理解しましょう。

その上で、「今の自分のフェーズに合った投資家」を効率的に探すなら、StartupListの検索機能が役立ちます。

 

自社に合ったVC・投資家を効率的に見つけませんか?

StartupListでは、投資家の投資レンジや評価基準、
過去の経歴等から自社に合った投資家を検索可能です。
StartupList上で、見つけた投資家とそのままコンタクトできます。
現在、登録済のベンチャー企業は8,500社以上、投資家数は3700名以上。

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監修者情報

前川 英麿 さん
プロトスター株式会社 代表取締役CEO
X:https://x.com/proto_maro
2008年、早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。エヌ・アイ・エフSMBCベンチャーズ株式会社(現、大和企業投資株式会社、SMBCベンチャーキャピタル株式会社)に入社し、ベンチャーキャピタルに従事。その後、常駐のターンアラウンド支援に特化したフロンティア・ターンアラウンド株式会社を経て、2015年スローガン株式会社に参画。投資事業責任者としてSlogan COENT LLPを設立し、執行役員カンパニープレジデント就任。2016年11月に挑戦者支援インフラを創るべくプロトスター株式会社を創業。
 
他にサイトビジット社外監査役、経済産業省 先進的IoTプロジェクト選考会議 審査委員・支援機関代表等を歴任。ホロラボ社外監査役、東京都 政策目的随意契約認定審査会 外部審査委員、青山学院大学「アントレプレナーシップ概論」非常勤教師、グローバルビジネス研究所プロジェクト研究員。早稲田大学ビジネスファイナンス研究センター招聘研究員等。日本ベンチャー学会所属。著『起業の壁 ―安易な起業はおススメしません

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