「シードで3,000万円調達したいが、高望みだろうか?」
「シリーズAに進むために、売上はいくら必要なのか?」
スタートアップの資金調達には、成長段階に応じた「型(ラウンド)」と「相場」が存在します。
ここを無視して、シード期のVCに「10億円ください」と言っても、会話は成立しません。
しかし、この「相場」は生き物のように変化します。特にここ数年、シード期の調達額は大型化しており、一昔前の常識が通用しなくなっています。
この記事では、元VCである私が、最新の市場環境を踏まえた投資ラウンドごとの「調達金額の目安」と、次のステージに進むためにクリアすべき「KPI(実績)の壁」について解説します。
【まずは全体像を知りたい方へ】
VCの仕組みや、資金調達全体の流れを知りたい方は、以下のメイン記事を先にご覧ください。
1. 【一覧表】投資ラウンドの定義と金額相場
まずは全体像を把握しましょう。一般的に、スタートアップの資金調達は以下のような階段を登っていきます。
| ラウンド | 企業のフェーズ | 調達額の相場(目安) | 主な資金調達先 |
| プレシード |
創業前〜直後 アイデア段階、試作品開発 |
数百万〜1,000万円 |
創業者資金、親族、 エンジェル投資家 |
| シード |
立ち上げ期 β版リリース、仮説検証 |
1,000万〜8,000万円 |
エンジェル、独立系VC、 政府系金融公庫 |
| シリーズA |
成長初期 PMF達成、本格的な顧客獲得 |
1億〜5億円 |
VC(独立系・金融系)、 CVC |
| シリーズB |
拡大期 黒字化またはシェア急拡大 |
5億〜20億円 | VC、CVC |
| シリーズC以降 |
完成期 IPO準備、M&A、海外展開 |
数十億円〜 |
大手VC、PEファンド、 海外機関投資家 |
| シリーズC以降 |
完成期 IPO準備、M&A、海外展開 |
数十億円〜 |
大手VC、PEファンド、 海外機関投資家 |
※金額はあくまで目安です。SaaSかDeepTech(研究開発型)かによっても桁が変わります。
StartupListを利用する多くの起業家は、この中の「プレシード〜シリーズA」を目指しています。
あわせて読みたい:投資ラウンドとは?専門家が教えるスタートアップの資金調達と注意点
2. シードラウンド(Seed):仮説検証の戦い
シード(種)という名前の通り、事業の種を撒き、芽が出るかを確認するフェーズです。
-
目的: MVP(実用最小限の製品)を作り、市場に受け入れられるか(PMFの兆し)を確認すること。
-
VCが見ているポイント: 「チームの魅力(誰がやるか)」と「市場の大きさ(夢)」。
-
この時期の壁: 実績がないため、銀行融資や大手VCの審査は通りにくい。
- シード期は「実績」ではなく「夢(ストーリー)」で資金を集めるステージです。
「まだ売上ゼロだから…」と臆する必要はありません。そのための「シードマネー」です。
[あわせて読みたい:シードラウンドとは?資金調達手法や特徴を解説](※既存記事)
3. シリーズAラウンド:PMFとトラクションの戦い
ここからが本番です。多くのスタートアップにとって最初の大きな試練となります。
-
目的: PMF(Product Market Fit)を完了させ、マーケティングに投資して顧客を一気に増やすこと。
-
VCが見ているポイント: 「トラクション(実績数値)」と「ユニットエコノミクス(1顧客あたりの採算性)」。
-
この時期の壁: 夢だけでは語れなくなる。「で、数字はどうなの?」と厳しく問われる。
- あわせて読みたい:シリーズAとは?資金調達における特徴や調達先を紹介
4. 【まろコメント】なぜ多くの起業家が「シリーズAの壁」で脱落するのか?
シードでの調達はうまくいったのに、シリーズAで資金が尽きて倒産してしまう。これを「シリーズAの壁」と呼びます。
なぜここで躓くのか? 私が多くの相談を受けてきて感じる理由は一つです。
- 評価基準が『定性(アート)』から『定量(サイエンス)』に切り替わることに気づいていないからです。
-
シードの評価:
- 「創業者の熱量がすごい」「アイデアが面白い」「世の中を変えそうだ」
- → 「期待値」で投資される。
-
シリーズAの評価:
- 「CAC(獲得コスト)が1万円で、LTV(生涯価値)が5万円だから、1億円広告を踏めば5億円になる」
- → 「再現性(計算式)」で投資される。
シードVCは「応援」で出資してくれますが、シリーズA以降のVCは「投資マシーン」として、再現性のある計算式を求めます。
このモードチェンジができず、いつまでも「ビジョン」だけを語っている起業家は、シリーズAのVCから「良い人だけど、投資はできない(計算が立たない)」と判断されてしまうのです。
5. StartupListは「シード・アーリー」が主戦場です
「VCに会うには、まだ早すぎるかもしれない…」
もしそう思っているなら、それは誤解です。
実は、StartupListに登録している投資家の約7割以上が、「シード〜アーリー(シリーズA未満)」の企業を探している投資家です。
つまり、StartupListは「実績が出ている企業」のための場所ではなく、「これから実績を作る企業(あなた)」のための場所なのです。
-
大手VCは敷居が高い?
- StartupListには、シード期に特化した独立系VCやエンジェル投資家が多数います。
-
実績がないとダメ?
- 「アイデア段階(プレシード)」でも投資検討する投資家も登録しています。
「まだ早い」と遠慮する必要はありません。ここがあなたの主戦場です。まずは登録して、シード期の資金調達に成功した先輩たちの後に続きましょう。
まとめ:自分の「現在地」を知り、適切な相手と話そう
資金調達で最も無駄な時間は、「ステージが合わない投資家と商談すること」です。
数千万円を投資したいシードVCに「10億円ください」と言っても無理ですし、数十億円を運用するレイターVCに「アイデアを聞いてください」と言っても相手にされません。
まずは自社がどのラウンドにいて、相場はいくらで、どんな実績(KPI)が求められているのかを理解しましょう。
その上で、「今の自分のフェーズに合った投資家」を効率的に探すなら、StartupListの検索機能が役立ちます。
自社に合ったVC・投資家を効率的に見つけませんか?

StartupListでは、投資家の投資レンジや評価基準、
過去の経歴等から自社に合った投資家を検索可能です。
StartupList上で、見つけた投資家とそのままコンタクトできます。
現在、登録済のベンチャー企業は8,500社以上、投資家数は3700名以上。
関連記事
監修者情報





