「VC(ベンチャーキャピタル)って、銀行や個人投資家と何が違うの?」
「急成長を求められると聞くけれど、実際はどんな支援をしてくれるの?」
資金調達を考え始めた起業家にとって、VCという存在は少しハードルが高く、ブラックボックスに見えるかもしれません。
しかし、VCの仕組みを正しく理解し、彼らの論理を知れば、VCは決して「怖い株主」ではなく、事業を爆発的に成長させる最強のパートナーになります。
この記事では、元VCであり、現在は国内最大級の起業家・投資家マッチングプラットフォーム「StartupList」を運営する私が、「教科書には載っていないVCのリアル」を解説します。
【手っ取り早く投資家を探したい方へ】
仕組みはなんとなくわかっているから、具体的なVCのリストが見たいという方は、以下の記事をご覧ください。
1. VC(ベンチャーキャピタル)とは? わかりやすく図解
一言で言えば、VC(ベンチャーキャピタル)とは、「高い成長が見込まれる未上場企業(スタートアップ)に出資を行い、株式公開(IPO)やM&Aによる売却益(キャピタルゲイン)を狙う投資会社」のことです。
銀行融資との決定的な違い
銀行とVCの最大の違いは、「デット(借金)」か「エクイティ(資本)」かです。
- 銀行(デット): お金を「貸す」場所。元本と利息の返済義務がある。失敗したら借金が残る。
- VC(エクイティ): お金を「出資する」場所。返済義務はない。その代わり、会社の「株式(経営権の一部)」を渡す。
VCは、あなたが失敗してもお金を返せとは言いません。その代わり、成功した時に会社が大きくなっていること(株価が上がっていること)を期待してリスクマネーを投じているのです。
2. なぜVCは「急成長」を求めるのか? ファンドの仕組み
多くの起業家が疑問に思うのが、「なぜVCはそんなに急いで成長させようとするのか?」という点です。これはVCの性格がせっかちだからではなく、「ファンドの仕組み」に理由があります。
GP/LP構造と「10年」の壁
実は、VCが投資しているお金の多くは、自分たちのお金ではありません。LP(リミテッド・パートナー) と呼ばれる機関投資家や事業会社から預かったお金です。
これを「ファンド(投資事業組合)」という箱で運用するのですが、このファンドには通常「10年」という寿命(償還期限)があります。
- ①お金を集める
- ②スタートアップに投資する
- ③企業を育てて上場(Exit)させる
- ④10年以内に現金化してLPに返す
このサイクルを回す必要があるため、VCは「ゆっくり30年かけて大きくなります」というビジネスには投資しづらく、「数年で急成長し、上場できるモデル(Jカーブ)」を求めるのです。
【まろコメント:VCの本音】
私がVC時代、最も頭を悩ませたのもこの「時間軸」でした。どんなに良いプロダクトでも、ファンドの満期までにExitが見えないと投資決断ができません。「急成長」は意地悪で言っているのではなく、背後にいる出資者への説明責任があるからなのです。
なぜVCは急成長を求めるのか?ファンドの「仕組み」と「償還期限」から理解する投資家の論理
3. VC・エンジェル・銀行融資の違い比較表
あなたの会社のステージによって、最適な資金調達先は異なります。主な3つの調達先を比較してみましょう。
| 比較項目 | VC(ベンチャーキャピタル) | エンジェル投資家 | 銀行融資(デット) |
|---|---|---|---|
| 調達金額 | 数千万〜数十億円 | 数百万〜数千万円 | 実績・担保による |
| スピード | 中〜遅(1〜3ヶ月) | 早い(即日〜1ヶ月) | 早い(審査次第) |
| 返済義務 | なし | なし | あり |
| 経営関与 | あり(ハンズオン) | 人による | 基本なし |
| 主なステージ | アーリー〜レイター | シード(創業期) | 全般 |
- ・創業直後で実績がない: まずはエンジェル投資家や日本政策金融公庫の創業融資。
- ・PMF(製品が市場に適合)して一気に拡大したい: ここで初めてVCの出番です。
詳しくはこちら:【図解】VC・CVC・エンジェル投資家の違い|あなたのスタートアップは誰から調達すべき?
あわせて読みたい:【2025年最新版】エンジェル投資家8選!有名な個人投資家を紹介
4. VCから出資を受けるメリット・デメリット
「お金がもらえる」以外にも、VCを入れることには大きな意味があります。
メリット
- ①巨額の資金調達: 借入では不可能な数億円単位の資金を得て、採用やマーケティングに投下できる。
- ②ハンズオン支援: 経営戦略の壁打ち、採用支援、顧客紹介など、VCのリソースを活用できる。
- ③社会的信用(お墨付き): 「あの有名VCが投資した企業」となれば、採用や大手との提携がスムーズになる。
デメリット
- ①株式の希薄化(ダイリューション): 創業者の持株比率が下がるため、経営権の維持に注意が必要。
- ②経営の自由度への影響: 重要な決定には株主(VC)の同意が必要になる場合がある。
- ③Exitへのプレッシャー: 上場やM&Aを目指さない(やっぱり中小企業でいいや、という)方向転換は難しくなる。
SLピッチ交流会の様子。VCは単なる出資者ではなく、事業の悩みを共有できるパートナーでもあります
5. いくら調達できる? 投資ラウンドと相場目安
スタートアップの資金調達は、一度で終わりではありません。成長段階(ラウンド)ごとに繰り返します。
-
・シードラウンド(創業期)
- 調達額:500万円〜5,000万円
- 目的:プロトタイプ開発、仮説検証
-
・シリーズA(成長初期)
- 調達額:1億円〜5億円
- 目的:PMF後の組織拡大、マーケティング
-
・シリーズB以降(拡大期)
- 調達額:数億円〜数十億円
- 目的:黒字化、新規事業、IPO準備
VCが主役になるのは、一般的に「プレシリーズA」や「シリーズA」あたりからです。最近ではシード期に特化したVCも増えています。
詳しくはこちら:シード・シリーズAの「VC投資額」相場は?投資ラウンドごとの定義と必要なKPI
あわせて読みたい:シードラウンドとは?資金調達手法や特徴を解説
6. 【元VCが暴露】審査で投資家が見ている「3つのポイント」
では、VCは数多くのピッチを聞いて、どこで投資判断をしているのでしょうか?第115回以上続く「SLピッチ」の現場や、私自身の経験から言うと、見るべきポイントは以下の3つに集約されます。
-
①Team(誰がやるのか):
- 特にシード・アーリー期はここが9割です。創業者の熱量、巻き込み力、そして「素直さ」があるか。
-
②Market(市場性):
- その市場は十分に大きいか(TAM)。今後伸びる市場か。「ニッチすぎて上場できない」と判断されると投資されません。
-
③Product(競合優位性):
- なぜ「今」、なぜ「あなたたち」が勝てるのか。他社が真似できない強み(Moat)があるか。
【まろコメント:面談の裏技】
VCとの面談で答えられない質問をされた時、知ったかぶりをするのが一番NGです。「現時点では仮説ですが〜」「検証中です」と正直に答える、あるいは「次回までに調べてきます」と言える起業家の方が、実は信頼度(誠実さ)が高く評価されます。
プロトスター開催のイベントの様子。鋭い質問は、事業への興味の裏返しでもあります
詳しくはこちら:元VCが暴露。投資家が初回面談で密かにチェックしている「3つの審査基準」とは
7. 資金調達を成功させるためのステップ
VCからの調達は、以下のようなフローで進みます。平均して3ヶ月〜半年程度かかります。
- ①資料作成(ピッチデック): 事業計画書を作成する。
- ②VCリストアップ&アプローチ: 投資家を探してコンタクトを取る。
- ③初回面談・ピッチ: 事業のプレゼンを行う。
- ④デューデリジェンス(DD): 詳細な審査(財務、法務、ビジネスなど)。
- ⑤タームシート(条件提示): 投資金額や株価などの条件合意。
- ⑥契約・着金: 投資契約を締結し、口座に振り込まれる。
8. VCと出会うための効率的な方法
「良い事業を作っていれば、向こうから見つけてくれる」残念ながら、これは間違いです。VCは多忙であり、起業家側からアプローチしなければ出会えません。主な方法は以下の3つです。
-
知人の紹介(リファラル):
- 最も確度が高いですが、強力なコネが必要です。
-
コーポレートサイトへの問い合わせ:
- いわゆる「コールドメール」。返信率は低く、根気が必要です。
-
ピッチイベント・マッチングサービスの活用:
- これが最も効率的です。 資金調達意欲のあるVCが集まる場に行くことで、一度に多数の接点が作れます。コネクションがない状態から、自力で投資家の連絡先を調べてコールドメールを送るのは膨大な時間がかかります。
資金調達の準備に集中するためにも、まずは国内最大級のマッチングプラットフォームで、自社に興味を持ってくれそうなVCを探すのが近道です。
自社に合ったVC・投資家を効率的に見つけませんか?

StartupListでは、投資家の投資レンジや評価基準、
過去の経歴等から自社に合った投資家を検索可能です。
StartupList上で、見つけた投資家とそのままコンタクトできます。
現在、登録済のベンチャー企業は8,500社以上、投資家数は3700名以上。
詳しくはこちら:VCへの「会い方」と「投資家の探し方」4選|コネなしからの資金調達方法
まとめ:VCは事業を加速させるパートナー
VC(ベンチャーキャピタル)とは、単なる金貸しではありません。あなたの事業のリスクを共に背負い、急成長という夢を共有して並走してくれるパートナーです。
仕組みやリスクを正しく理解した上で活用すれば、自社だけでは到達できないスピードで世界を変えることができます。
まずは、どんなVCが日本にいるのかを知り、実際に接点を持つことから始めましょう。
監修者情報

X:https://x.com/proto_maro




